三菱商事が、中国拠点のトレーダーが関与した疑いがある銅取引での不正行為で、138億円の損失を被ったことが分かった。事情に詳しい関係者が明らかにした。

資源を扱う商社では従業員による不正疑惑が相次ぐ。商品取引で多額の資金を扱うトレーダーが、会社を犠牲にして私腹を肥やそうとするリスクが浮き彫りとなっている。10月には資源商社大手トラフィグラ・グループが、モンゴルの石油事業で従業員が不正行為に関与した疑いがあり、11億ドルの引当金を計上する可能性があると発表した。

関係者によると、三菱商は傘下のRtMチャイナで銅取引を担当していたゴン・フアユン氏を解雇した。同氏が自身と関係のある地場企業などと無許可で取引をしていたことが判明。関係者は損失額は6億元(約123億円)をはるかに超えるとしている。

三菱商の広報担当者は、7-9月期(第2四半期)の決算資料で、「中国関連取引損失」として開示していた138億円の純損失が、ゴン氏の不正取引によるものだと明らかにし、それ以上の損失の懸念はないとした。

またフアユン氏は担当していた銅取引に関して重大な背任行為が認められたことから、すでに懲戒解雇し、刑事告訴もしたと明らかにした。同社とRtMチャイナは被害者として、公安当局に全面的に協力するとした。刑事手続きに関わるとして、詳細についてはコメントを控えた。

報道を受けて三菱商の株価は下げ幅を拡大。一時前日2.1%安の2573円まで下落した。

ゴン氏にコメントを求めたが得られなかった。ゴン氏と以前に取引関係にあった複数の中国企業も、同氏と連絡が取れないと述べた。この件がセンシティブな問題のため、匿名を条件に明らかにした。

関係者によると、三菱商は銅部門の一部顧客が決済しなかったり、支払いが遅れたりしたことを受けて、今年に入ってゴン氏の取引について調査を始めた。

ゴン氏がこの取引を通じて個人的な利益を得ており、自身の投資資金やぜいたくな生活のための資金源にしたと三菱商は見ていると、関係者は述べた。一部の関係者によると、ゴン氏は中国を離れたとみられる。不正疑惑の解明に協力した三菱商の取引先のうち、少なくとも1社はこの問題を中国警察に報告した。上海の警察当局はコメント要請に応じなかった。

関係者は、保守的な社風で知られる商社の一つである三菱商がさらに慎重になる可能性があると指摘。特に中国のトレーダーが、不祥事の余波を受けるのではないかと懸念しているという。

(三菱商事のコメントを追加して更新します)

--取材協力:Archie Hunter.

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