4日の韓国株式市場で、韓国総合株価指数が下落。一方、通貨ウォンは上昇した。尹錫悦大統領は前日夜に「非常戒厳」を宣布したが、その後短時間で解除した。

韓国総合株価指数は1.4%安で取引を終了。サムスン電子株は3%下げる場面もあった。一方、ウォンは一時1.5%高の1ドル=1406.35ウォンまで上昇した。

尹大統領は3日深夜、40年強ぶりに「非常戒厳」を宣布し、世界の市場に動揺が走った。韓国ウォンと韓国関連の上場投資信託(ETF)は急落したが、その後、韓国当局が必要であれば市場に「無制限の流動性」を供給する意向を示したことなどを受け、下げ幅を縮小した。

国会の外でデモ隊の排除に動く警官(12月4日、ソウル)

戒厳令は短期で解除されたものの、韓国関連資産に対する投資家の見方は悪化しており、グローバルの指数で先進国市場入りを目指す同国政府の取り組みに悪影響が及ぶ可能性がある。

世界的な同業と比較し韓国株が割安に放置された「韓国ディスカウント」が長引く可能性もある。

米カーライル・グループのグローバルリサーチ・投資戦略部門責任者のジェイソン・トーマス氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「今後は一段と大きな変動が予想される。もちろん、これが『韓国ディスカウント』と呼ばれるものを強めるものになる可能性がある」と指摘した。その上で「しばらくはリスクプレミアムが高止まりする」ものの、政府が流動性へのコミットメントを維持する限り、「急激な売り崩しは起こらないだろう」と語った。

尹大統領は戒厳令について、野党が政権をまひさせようとするのを阻止するためだと主張していた。野党側は独自の予算案を議会で強行可決に持ち込もうとしたのに対し、尹氏は議会を通過した一連の法案に拒否権を発動するなど対応し、与党の怒りを買うこともあった。

 

韓国金融委員会の金秉煥委員長は緊急会議の後、当局は市場の安定性を確保するため「あらゆる手段を講じる」とコメント。10兆ウォン(約1兆円)規模の株式市場安定化基金は必要であれば直ちに投入できる状態にあるとした。

韓国銀行(中央銀行)の金融政策委員会は午前9時(日本時間同)から臨時会議を開催し、経済と市場を保護する対策について議論した。同中銀は会議後、安定性確保のため、必要に応じて短期の流動性を高め為替市場で「積極的な」措置を講じる方針を示した。

 

韓国関連の資産は、中国の景気低迷やトランプ次期米大統領の関税を巡る脅しを受け、世界でパフォーマンスが最も悪い資産の一つと化している。通貨ウォンは今年に入り対ドルで約9%下落し、アジア通貨の中で最も弱い。韓国総合株価指数は約8%下落している。

市場の変動拡大を受け、当局はウォンを支援する考えを示している。ただ投資家は、企業価値向上に向けたプログラムをはじめ、市場関連のさまざまな政策への痛手を見込んでいる。

ブルームバーグがまとめたデータによると、韓国の株式指標は現在、1年先の予想簿価の約0.8倍で取引されている。これに対してMSCIワールド指数は2.9倍だ。

フィボナッチ・アセット・マネジメント・グローバルのユン・ジュンイン最高経営責任者(CEO)は、「尹氏の政治キャリアは終わりに近づいているようだ」と指摘。「短期的には買いの好機、長期的には韓国ディスカウントの問題は継続し、成長の逆風となるだろう」と語った。

原題:Yoon’s Martial Law Gamble Roils Korean Markets, Hurts Reforms、Korean Won Gains, Stocks Dip After President’s Brief Martial Law,Bank of Korea Pledges Steps to Keep Markets Stable After Drama(抜粋)

(相場を更新します)

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