広がる「チャイルドフリー」に“規制”も
若年層を中心に選択として子供を持たない考え方(チャイルドフリー)が広がりをみせていることに対して、プーチン大統領の側近議員を中心に議員立法が議会に上程され、23日にプーチン大統領が署名して成立することとなった。同法では、インターネットやメディア、映画、広告などでチャイルドフリーに関する内容を宣伝することを禁じており、違反した場合は最大で市民が40万ルーブル、公職者が80万ルーブル、法人が500万ルーブルの罰金が科されると規定している。
これにより、すでに非伝統的なライフスタイルに関する内容のほか、ウクライナ戦争に関する反対意見などに加え、新たな形で表現の自由に対する制限が加えられることとなり、益々ロシア国内における情報は『特異性』を強めることは避けられない。
プーチン政権としては人口減少がロシアの弱体化を招くとして、こうした考え方を『欧米などの陰謀』などと主張することにより強制を後押ししたと考えられる。
しかし、足下で出生数の減少ペースが加速している背景には、ウクライナ戦争を巡る不透明感に加え、物価上昇が長期化するなかで生活水準に下押し圧力が掛かっていることが影響していることを勘案すれば、こうした当局による『締め付け』が期待通りの効果を上げられるかは見通しにくい。
今後のロシアを巡ってはこれまで以上に『それじゃない』感が強い国となる可能性が高まっている。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)