新たな疑惑噴出による影響は

一方で、20日に米国の検察当局がアダニ・グループのゴーダム・アダニ会長やグループ会社の幹部などを贈賄や巨額詐欺に関与した疑いで起訴したことを明らかにするなど、新たな疑惑が噴出している。起訴状に拠れば、アダニ氏などが2020年から今年にかけて、太陽光エネルギー事業の契約獲得を目的にインド政府高官に対して約2.65億ドルの贈賄を行ったほか、その間に虚偽や誤解を招く内容を含む説明資料を基に30億ドルを上回る融資や債券発行による資金調達を行ったとしている。

また、今回の起訴に付随する形で、米証券取引委員会(SEC)はアダニ氏らに対する民事訴訟を起こしている。アダニ氏を巡っては、米大統領選でのトランプ氏の勝利を受けて米国のエネルギー安全保障に関連したインフラ投資計画に総額100億ドルの投資を実施する計画を明らかにするなど、モディ首相との関係の近さも追い風に事業拡大を目指す姿勢をみせてきた。

しかし、今回の起訴によってそうした計画がとん挫、ないし後退を余儀なくされる可能性も予想されるなど、事業の行方に大きく影響を与えることも見込まれる。また、上述のように足下のインド株を取り巻く環境は厳しさを増しており、アダニを巡る問題はインド企業の在り様に影響を与えるほか、外国人投資家を中心にインド株に対する見方に影響を与える可能性にも留意する必要がある。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)