25日の日本市場では円相場が一時1ドル=153円台に上昇した。トランプ次期米大統領が財政規律重視派とされるスコット・ベッセント氏を次期財務長官に指名し、米国のインフレが抑制されるとの見方から、米長期金利の上昇とドル高の「トランプトレード」を巻き戻す動きが広がった。米金利の低下を材料に日本でも債券が買われた。

マクロヘッジファンド運営会社のキー・スクエア・グループを率いるベッセント氏は、トランプ氏が掲げる関税および減税政策を支持する意向。しかし投資家は、財政赤字の削減やインフレ抑制、関税への段階的アプローチを支持している点に着目し、保護主義的な政策が警戒されるトランプ政権で経済と市場の安定を優先するとの期待が高まった。

みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストらはリポートで、ベッセント氏が一定の歯止め役となることで、インフレとドル高の圧力が弱まるとの期待があると分析。財政悪化による米金利上昇懸念が後退し、ドルロングの巻き戻しにつながった可能性もあるとした。

トランプ次期政権の政策期待を追い風に米国の企業活動が拡大したことが好感され、株式相場は続伸。日経平均株価は取引時間中に一時3万9000円の節目を回復し、終値ではおよそ2週間ぶりの高値となった。

為替

東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=153円台半ばに上昇。次期米財務長官にベッセント氏が指名され、米国のインフレが抑制されるとの見方からドル売り・円買いが優勢だった。28日の米感謝祭を前に持ち高調整のドル売りも出やすかった。

もっとも、その後は急速なドル売り・円買いの反動が出て154円台に戻している。SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、ドル売りは「まだ始まっていないトランプ政権の政策を想像した自信のない動きだった」と指摘。「ベッセント氏が財務長官になったからといって、拡張的な財政政策がやむわけでもない」として、基本的には米金利上昇、米株高、ドル高だろうと述べた。

ベッセント氏が米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、トランプ氏のさまざまな減税の公約を果たすことが自らの政策の優先課題だと説明したほか、「世界の準備通貨としてのドルのステータス維持」に重点的に取り組むと発言したことも、ドルの買い戻しにつながった。

債券

債券相場は上昇。米国の長期金利低下を受けて買いが先行した。ただ、日本銀行による追加利上げへの警戒は根強く、上げ幅を縮める場面もあった。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、米国の次期財務長官人事を受け、米金利が低下したことに連れて買いが先行したと指摘。その後は「日銀の追加利上げ観測や米長期債利回りの低下一服で上げ幅を縮小した」と述べた。

財務省はこの日、流動性供給入札を実施した。稲留氏は、応札倍率が平均よりもやや高めで無難な結果だと指摘。日銀の利上げを巡る不透明感や短い年限の国債発行の増額の可能性など、逆風が吹く中でもしっかり需要が集まったと評価した。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

東京株式相場は続伸。米国でトランプ次期政権の政策期待を追い風に企業活動が拡大したことが好感され、精密機器や電機など輸出関連株が買われた。著名ファンドの株式保有が一部で報じられた京成電鉄や京浜急行電鉄など陸運株は急伸した。

リクルートホールディングスが4.4%値上がりし、TOPIX上昇に最も寄与。指数を構成する2128銘柄のうち945銘柄が上昇、1049銘柄が下落した。

東海東京インテリジェンス・ラボの池本卓麻マーケットアナリストは「米国経済が崩れないことが日本株には大事」だと指摘。きょうは米景気が好調で、輸出関連をはじめ日本株にとって悪い環境ではないと捉えられているとの見方を示した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:Masaki Kondo、長谷川敏郎.

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