上場地銀(地方銀行、第二地方銀行)の24年9月期決算(中間決算)をみると、前年同期比、資金運用利益、役務取引等利益とも改善。経費は増加したものの、経常利益は24%の増益となるなど、底堅い業績となっている。中核の預貸ビジネスをみれば、企業の積極的な設備投資等に伴う貸出残高の増加に加えて、日銀の政策修正等を背景とした金利上昇も追い風になっている。

しかし、各行の預貸金利ざや(貸出金利回り―預金利回り)をみると半数以上の地銀は改善していない。案件毎に設定される貸出金利の引き上げ幅は銀行間で差が出ている一方、預金金利は概ね横並びで上昇しており、利ざやの縮小圧力になっている。総資産規模別でみると小規模地銀ほど貸出金利の引き上げが遅れる傾向にある。

これまでの経緯をみれば、3月のマイナス金利政策解除時は、預金・貸出金利の変動が小幅にとどまった一方、7月の利上げ後は、多くの地銀が普通預金金利や短期プライムレートを引き上げた。今後、日銀の追加利上げにより、金利がさらに上昇すれば、融資先が金利引き上げに難色を示したり、返済能力が乏しい企業等では資金繰りが悪化する恐れもある。一方、預金獲得競争は激しさを増しており、貸出金利を引き上げられなければ、利ざやの縮小は避けられない。
今後、地銀は、融資先が抱える様々な経営課題の解決を支援する態勢を強化するなどして、貸出ビジネスの付加価値を高め、市場金利の上昇に見合う貸出金利の引き上げを進める必要がある。また、金利上昇に脆弱な企業に対しては、収益力強化等を後押しして金利上昇への耐久力を向上させることが重要となる。
(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 主任研究員 大嶋秀雄)