カナダ最大のテクノロジー企業で電子商取引を手がけるショッピファイが、反ユダヤ主義的な商品を扱うオンラインストアの出店を容認しているとして批判を浴びている。試されているのは、同社が緩和した利用規約だ。

問題のストアでは、ホロコーストを「作り話」と表現したデザインの衣料品やアクセサリー、第2次世界大戦中の反ユダヤ主義のプロパガンダ、アンネ・フランクの肖像をパロディー化した商品などが売られている。

こうした商品はX(旧ツイッター)に開設された反ユダヤ主義のアカウント「TheOfficial1984」で宣伝されており、このアカウントには20万人を超えるフォロワーがいる。

このXアカウントとオンラインストアの両方では、アドルフ・ヒトラーを称賛するコンテンツを共有した通信アプリ「テレグラム」のアカウントも紹介している。

米国のユダヤ人団体、名誉毀損(きそん)防止同盟(ADL)のニュースレターは13日、Xのアカウントと「反ユダヤ主義」的な商品の販売活動を問題視。16日には広くフォローされているアカウント「ストップ反ユダヤ主義(Stop Antisemitism)」がショッピファイにXのアカウントについて警告した。

ショッピファイの担当者は5回のコメント要請に応じなかった。

オンラインストアの運営会社は電子メールおよびXのアカウント上で、「言論の自由は不可侵の権利であり、われわれが何を着るかにも及ぶ」とコメント。企業としての行動指針を「抵抗」だとし、言論の自由などを保障した米国憲法修正第1条に触れた。

ショッピファイの利用規約は、ユーザーは事業を展開する場所で違法行為を行ったり、暴力を助長したり、ちらつかせたりすることはできないと定めている

インターネットアーカイブの「ウェイバック・マシン」によると、ショッピファイの従来規約では「憎悪的なコンテンツ」が禁止されていたが、ブルームバーグが確認したページのキャッシュに基づけば、この条項は2024年7月に削除されたもようだ。

この出店者が許容度が高まった新たなポリシーに違反しているかどうかは不明だ。しかし、カナダでは22年にホロコーストを巡りナチスによるユダヤ人虐殺を否定したり軽視したりすることが違法となった。

モントリオール・ホロコースト博物館の広報担当サラ・フォッグ氏は、問題となっている商品の一部は「間違いなくホロコーストの歪曲(わいきょく)と否定に当たる」と指摘した。

ショッピファイのトビアス・リュトケ最高経営責任者(CEO)は、右派ニュースサイト「ブライトバート」が運営するオンラインストアの禁止を求める圧力に抵抗した後、17年に「言論の自由を支持する」という記事をブログに投稿し、同社の立場を説明した。

ただ、ショッピファイが過去に暴力を助長するとして出店を禁じたストアもある。その一つがトランプ・オーガニゼーションが運営していたストアで、米大統領に来年再び就任するドナルド・トランプ氏の支持者が21年1月6日に米議会議事堂に乱入したことを受けた措置だった。

原題:Holocaust Denial Merch Tests Shopify’s Free Speech Ethos (1)(抜粋)

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