(ブルームバーグ):15日の日本市場では株式相場が反発した。米国の大幅利下げ観測の後退で為替市場で円安の勢いが続き、自動車や機械など輸出関連株が上昇。純利益計画の上方修正や自社株買いの発表が好感されたみずほフィナンシャルグループやかんぽ生命保険が急伸するなど、銀行や保険株も高い。
円安で日本銀行による早期の追加利上げ観測が高まっているため、債券は短中期債を中心に下落。円は対ドルで一時約4カ月ぶりの安値を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は14日、最近の米経済が目覚ましく良好に推移し、利下げを急ぐ必要はないとの見解を示した。米長期金利は同日、一時4.48%台と7月1日以来の高水準を付け、アジア時間15日も高止まりした。
一方、円安傾向が続いていることを受け、加藤勝信財務相は「足元では一方的、また急激な動きが見られる」とし、「行き過ぎた動きには適切な対応を取る」と市場をけん制した。午前に対ドルで156円台後半まで下げた円安の勢いは、午後に入り鈍った。
株式
東京株式相場は反発し、日経平均株価は一時500円以上上げる場面があった。円安が業績に好影響を与えるとみられた自動車や機械など輸出関連株を中心に、みずほFGなど銀行株、かんぽ生など保険株が高い。海運や鉱業など資源関連株も買われ、東証33業種は22業種が上昇。下落はサービスやその他金融、非鉄金属など。
TOPIXを構成する2128銘柄中、上昇は1019、下落は978。売買代金上位ではディスコやトヨタ自動車、日本郵船、キーエンスが上げ、香港のヘッジファンドであるオアシス・マネジメントの株式保有観測が広がった日産自動車も高い。
SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は、円安は最終的に日本企業の業績にとってプラスで、上昇している銘柄は自動車産業が中心だと述べた。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフ・マーケット・ストラテジストも、156円台まで円安が進んだことや時価総額の大きいメガバンクの決算が好感されたとの見方を示した。
債券
債券相場は短中期債を中心に下落。円安進行で日銀による早期の追加利上げ観測が高まっているほか、米長期金利の上昇に対する警戒から売りが優勢だった。新発2年国債利回りは一時0.555%と2008年12月以来、新発5年債は0.71%と09年11月以来、新発30年債は一時2.31%と10年以来、新発40年債は一時2.665%と08年以来の高水準を付けた。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、円安や米金利高が債券相場の重しだと指摘。日銀の植田和男総裁が18日の講演で、12月の追加利上げに向けた地ならしをするのではないかとの警戒感もあると言う。
この日行われた5年債入札については「利回りが0.7%台に上昇したので、需要が喚起されて良い結果となった」と稲留氏はみていた。入札結果によると、最低落札価格は99円95銭と市場予想の99円94銭を上回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は2銭と前回の3銭から縮小した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.81倍と7月以来の高水準。
新発国債利回り(午後3時時点)
外国為替
東京外国為替市場の円相場は対ドルで156円台前半で推移。156円台後半まで円売りが先行し、約4カ月ぶりの安値を付けた後は下げ渋った。18日に日銀総裁が講演を行うことが発表され、12月の金融政策決定会合に向け追加利上げを示唆するとの思惑で買い戻しが入った。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、パウエルFRB議長の利下げ慎重姿勢を受けてドル買いが先行した後は、週末を前に利益確定の円買い戻しが入りやすかったと指摘した。日銀総裁の講演予定も「12月追加利上げに向け、踏み込んだ発言をする可能性があり、利益確定の円買い戻しのきっかけになった」とみる。
一方、関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、朝方発表された日本の7ー9月期国内総生産(GDP)は市場予想を上回る増加となったものの、「さほど強くない結果で、日銀の追加利上げへの不透明感につながり、円の重し」と話していた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています
--取材協力:日高正裕、田村康剛.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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