(ブルームバーグ):国連はほぼ30年にわたり気候変動枠組み条約締約国会議(COP)を開催している。各国の代表が一堂に会し、地球温暖化がもたらす最悪の影響を阻止または軽減する方法を見いだそうとしている。
これまでの経験から、開催国がどの国になるかなど、さまざまな要因が会議の進展に影響することが分かっている。
昨年のCOP28はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された。今年のCOP29はアゼルバイジャンの首都バクーで11日に始まった。2年連続で石油と天然ガスへの依存が世界的に目立つ国での開催となった。
アゼルバイジャンには化石燃料の生産量を削減する差し迫った動機がほとんどなく、気候変動政策のリーダーとしての経験も乏しい。そのため、環境保護活動家たちはCOP29が地球温暖化の抑制において大きな進展をもたらすかどうかについて懐疑的だ。
気候変動がここ2年で引き起こした異常気象は洪水や干ばつ、熱波などで、世界のほぼ全域がその影響を受け、対策の難しさが浮き彫りになった。
何が危機にひんしているのか
地球温暖化が壊滅的なレベルに達しないようにするための時間は限られている。二酸化炭素(CO2)排出抑制目標の達成に向けた今後10年間は、気候政策にとって極めて重要な期間となる。
昨年は観測史上最も気温が高く、産業革命前の平均気温よりも1度余り暑かった。そして、今年はさらに気温が上昇する公算が大きい。
2015年のCOP21で締結されたパリ協定では、各国は産業革命からの気温上昇を1.5度に抑えるよう最大限の取り組みを行うことで合意。しかし、最近の国連分析では、気温は産業革命前の平均気温より2.1-2.8度上昇しピークに達すると示唆されている。
11月5日の米大統領選は、パリ協定からの再離脱を目指すドナルド・トランプ氏が制した。米国は第1次トランプ政権時にパリ協定から脱退し、バイデン政権になって復帰した。
中国に次ぎ世界2位のCO2排出国である米国が、再生可能エネルギーを奨励する政策を中止する可能性が再び高まっている。
COP29会合の焦点は
経済の脱炭素化と気候変動に適応するため、途上国に向けの資金が特に必要となっている。09年には年1000億ドル(約15兆円)で合意されたが、先進国が資金を調達するのに22年まで待たなければならなかった。
現在では、途上国や国連を含むオブザーバーは、必要な資金額を1兆ドル以上と見積もっている。欧州連合(EU)加盟国をはじめとする資金の拠出国は、いまだ途上国と分類されている中国などの国々にも分担金を支払うよう求めている。
今年の開催国に対する懐疑的な見方とは
COPの目標は温室効果ガスの排出削減であり、それは化石燃料の生産と消費を減らすことを意味する。
昨年のCOPでは、各国が「化石燃料からの脱却」で合意。輸出の95%を石油・天然ガスが占めるアゼルバイジャンは、欧州の需要に応えるためにガス生産の拡大を計画している。こうした国がCOPの開催国となるインセンティブはほとんどないように見受けられる。

アゼルバイジャンの人権記録を踏まえ、自由で開かれた会議を開催できるかどうか疑問視する見方もある。政府は化石燃料産業を厳しく監視する一部の評論家や活動家、ジャーナリストを投獄している。
COPで何が起こるのか
主な焦点は。CO2排出量を減らし、気候変動の影響を最も受けている国々を保護する方法だ。1997年に京都で画期的な成果が達成され、温室効果ガス排出量を削減する先進国の法的義務がまとまった。
また、2015年にはパリで、産業革命前の水準から地球の気温上昇を2度(理想的には1.5度)に抑えるという明確な目標が設定された。
COPは通常2週間ほど開催され、冒頭で各国のリーダーたちが政治的な方向性を示す。特に目立つのが海抜の低い島国や貧しい国々の代表が、より積極的な行動を求める姿だ。
その後、各国首脳らトップクラスの代表は帰国し、2週目は政府高官たちが最終合意に向け非公開で交渉を進め、コンセンサスによって合意が採択される。
開催国は誰が選ぶのか
開催国は国連の5つの地域グループ間で持ち回りとなっており、関心のある国が立候補し、コンセンサスで開催国を決定する。
開催が決まった国は、各国をまとめつつ、その年に目指すべき野心的な目標のレベルを見極める。通常、この作業はCOPのかなり前から始まるが、各国代表団の間を走り回り合意を取り付けるという実際の作業はCOP開催中にスタートする。
今年は東欧で開催される順番だったが、幾つかの国が関心を示したものの、ロシアはウクライナ侵攻に対するEUの対応を理由にEU加盟国に対し拒否権を行使。
アゼルバイジャンは隣国アルメニアとの長年にわたる紛争に巻き込まれており、開催国に適していなかったが、アルメニア、ロシア両国が土壇場でアゼルバイジャンの立候補を支持したため、開催国を務めることになった。
COPはどのようにして始まったのか
ブラジルのリオデジャネイロで1992年に開かれた地球サミットの後にCOPは始まった。COP1は95年にベルリンで開催された。COPの毎年開催は、各国に積極的な行動を促し、進捗(しんちょく)状況を追うことが目的だ。
- COPの歴史
- 1992年:地球サミット(リオデジャネイロ)
- 1995年:COP1(ベルリン)。年次開催で合意
- 1997年:京都議定書を採択
- 2009年:コペンハーゲンで開催されたが、排出制限に関する期待された合意に達せず
- 2015年:パリ協定を採択。米国は2020年に離脱し、21年に復帰
- 2021年:グラスゴーで開催。石炭の「段階的削減」に合意
- 2023年:ドバイ開催。化石燃料からの「脱却」に合意
- 2024年:バクーで11月11日から22日まで開催
開催国が影響を与えたことはあるのか
2021年にCOP26をグラスゴーで開いた英国の働きかけは、石炭の「段階的削減」合意という成果をもたらした。多くの人が望んでいた「段階的廃止」という表現には至らなかったが、特定の化石燃料に関する文言が盛り込まれたのは初めてだった。
翌年エジプトで開催されたCOP27では、途上国の「損失と被害」に対応する基金の設立が決まった。開催国の勝利と言える。
ドバイでのCOP28では、最終文書に「化石燃料」からの脱却に明確に触れた文言が初めて盛り込まれた。これはCOP28の議長を務めたジャベルUAE産業・先端技術相の産油国に対する影響力によるところが大きいと一部の出席者は評価している。
(ブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーの創業者で、筆頭株主でもあるマイケル・ブルームバーグ氏は気候変動に関する国連事務総長特使を務めています。ブルームバーグ・フィランソロピーズはCOP議長と定期的に連携し、気候変動対策を推進しています)
原題:What Are COP Meetings For? Does It Matter Who Hosts?: QuickTake(抜粋)
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