(ブルームバーグ):米大統領選におけるトランプ氏の圧倒的な勝利を受けて当初はリスクオンムードが広がり、米国株は急上昇したが、投資家にとってはこれからが正念場となる。
トランプ次期大統領は選挙期間中、大幅な追加関税賦課、減税、企業に友好的な規制緩和、移民法の厳格化など数多くの公約を掲げた。トランプ氏の政策が経済を活性化させるとの観測から先週株式に飛びついた投資家にとって、どのセクターが持続的な恩恵を受けるのか見極めることが課題となっている。
例えば、関税はインフレを誘発し、多国籍企業大手に打撃を与える可能性がある一方、国内志向の小型株にはプラスになる可能性がある。しかし、不法移民の取り締まり強化は人件費の上昇を招く恐れがあり、中小企業を圧迫する可能性が高い。
一方、伝統的なエネルギーに対する友好的な姿勢は生産を増加させ、原油価格を押し下げる可能性がある一方、クリーンエネルギーおよび電気自動車(EV)産業を支援するバイデン大統領の政策を覆す試みは議会を通過させるのが難しいかもしれない。
アキュベスト・グローバル・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、エリック・クラーク氏は「アクティブ投資家はどの企業や産業が今恩恵を受ける可能性があるのかを見極めるために業界レベルでメスを入れ始めると予想している」と指摘。「実際に何が実施されるのか、それをどう活用するのかについて、時間がたてばより多くのデータが得られるだろう」と述べた。

クラーク氏はすでにいくつかの好機を活用している。6日に銀行、工業、エネルギー、大手テクノロジー株が株式市場を押し上げた際、同氏はハイテク株と金融株の一部を売却。一方、相場急伸の中で下落していた高級小売株と生活必需品株を取得した。
より明確な見通し
先週上昇した小型株は、トレーダーが今後の政策の状況を見極める中でスイートスポットにあるようだ。これらの企業は収益の大半を国内で上げているため、保護主義の高まりから恩恵を受ける可能性が高い。法人減税も追い風となるだろう。
トランプ氏は輸入品に一律10-20%、中国製品には最大60%の関税を課す意向を示している。少なくとも一部の関税が実現する見通しとなったことで、小型株で構成されるラッセル2000指数は先週8.6%上昇した。同指数の構成銘柄で値上がり率上位のデジタル決済企業セズルの株価はその間、2倍となった。

また、バイデン政権下で銀行規制の強化を進めてきた規制当局を改革するとのトランプ氏の公約を受け、金融株も良好なポジションにあるとみられている。
ウェルズ・ファーゴの銀行アナリスト、マイク・メイヨー氏は、規制緩和の新時代がウォール街の収益性を押し上げる可能性があると指摘。シティグループ、ゴールドマン・サックス・グループ、JPモルガン・チェースの株価はトランプ氏の勝利を受けて急上昇した。
バークレイズの米国株式ストラテジスト、ベヌ・クリシュナ氏は「株式市場は、小型株を通じてトランプ氏の国内成長政策を、金融株や大手テクノロジー株への投資を通じて規制緩和への期待を織り込もうとしている」と語った。
キャタピラーなどの産業用機械メーカーは、エネルギーや鉱業関連商品の国内生産への注力から恩恵を享受する見通し。
ジェフリーズのアナリスト、スティーブン・ボルクマン氏は、同セクターのトップピックとして再びキャタピラーを挙げ、中国へのエクスポージャーが限定的であることを指摘。またファスナルやWWグレンジャーなどの産業用供給品の流通業者には追加関税などのコスト増を価格に転嫁する実績が豊富だとした。
移民の取り締まり強化は逆風になる可能性があり、投資家も注視している。それでもコアシビックやジオ・グループなど民間刑務所運営会社のように恩恵を受け得る企業もある。
混迷深まる
一方、ウォール街の一部では、選挙後の特定の市場動向について疑問を呈する声も上がっている。
石油・ガス会社を含む伝統的なエネルギーセクターの株価は、トランプ氏の石油支持姿勢を反映し同氏の当選を受けて急伸した。しかし、業界ウォッチャーは、公有地での化石燃料採掘を増やすために規制を緩和する試みは供給過剰を引き起こし、価格を下落させるリスクがあると警告している。
小売業者はサプライチェーンを通じて中国へのエクスポージャーが総じて高いことから、先週は株価が急落した。関税を巡る議論が高まるにつれ、小売業者が投資家の標的となる可能性は高い。
バークレイズのアナリスト、セス・シグマン氏は、ディスカウントチェーンや家具メーカーが最も大きな影響を受ける可能性があると指摘。ファイブ・ビロウ、ダラー・ツリー、家電量販店のベスト・バイなどを挙げている。
原題:With Trump Win Boosting Stocks, Investors Hunt for Next Winners(抜粋)
--取材協力:Katrina Compoli、Eleanor Harmsworth.
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