顧客アンケートは、企業が顧客のニーズや満足度を把握するための重要なツールである。多くの企業が定期的にアンケート調査を実施し、その結果を分析して製品開発やサービス改善に活用している。

アンケート分析手法の進化は、現状大きく2つの段階に分けられる。第一段階は人間による集計と分析である。この方法では、統計的手法を用いて傾向を把握し、人間の専門家が解釈を加えて洞察する。現在はほぼこの段階にある。しかし、分析者の主観や経験に左右される部分が大きく、膨大なデータを短時間で処理することに限界がある。第二段階は、基本的なAIの活用である。本レポートで扱う事例もこの段階に位置づけられる。この段階では、AIによる大量データの高速処理、パターンや関連性の発見、自然言語処理による自由記述回答の分析が可能となっている。前回のレポート(注1)時点と比較しても、今ではAIの活用範囲はさらに拡大し、より詳細な分析が可能になっている。

本レポートでは、現在のAIの活用事例を詳細に分析することで、アンケート分析の新たな可能性と、今後の展望を明らかにしていく。これにより、企業がAIを活用したアンケート分析をどのように導入し、顧客理解と戦略立案プロセスを改善できるかについての示唆を得る。

AIによる顧客ニーズ分析とビジネス提案

まず、筆者が実施したAI活用に関する講演後に収集された顧客アンケートデータをもとに、AIによる分析と提案のプロセスを詳述する。このプロセスは、前回のレポートで示した基本的なAI活用とは異なり、より高度で包括的なアプローチを採用している。まず、AIに対して「アンケート結果を考察ください」と指示をした。AIは提供されたアンケートデータを分析し、以下のような洞察を提供した。全体的な評価としては、大多数の参加者が講演を肯定的に評価し、その内容を仕事や生活に役立つと感じている。AIに対する意識の変化については、多くの参加者がAIを身近で活用可能なものと認識するようになった。実践への意欲も高く、「まずは使ってみる」という意見が多数を占め、無料版のAIツールからの開始を検討する参加者もみられた。同時に、日本企業や日本のAI活用の遅れに対する危機感も醸成されており、これがAIへの取り組みを加速させる動機となっていた。注目すべき点として、世代を超えた学びの機会が創出されており、中高年の参加者からもAIを学ぶ意欲が示された。具体的な活用イメージも多く挙がっており、メール返信、データ集計、報告メモ作成などが例として挙げられている。一方で課題も明らかになった。一部参加者にとっては内容が難しく、より具体的な活用事例やQ&Aセッションの充実を求めるとの声があった(図表1)。

次に、AIに「考察結果に基づき、講演に参加してもらった方へ展開できるビジネスの種を考えてください」と指示したところ、AIは複数のビジネスを提案してきた。具体的には、AI活用ワークショップシリーズ、AI導入コンサルティングサービス、AI活用事例共有プラットフォーム、AIアシスタント開発サービス、AI倫理・セキュリティ研修プログラム、シニア向けAI活用講座、AI活用効果測定サービスである。これらの提案は、アンケート結果から抽出された参加者のニーズや課題に直接応えるものとなっている(図表2)。

最後に、AIにワークショップの構成案を提示し、その詳細化を依頼した。AIは各編を2時間に収める形で計画を提案してきた。基礎編では複数のAIツールの基本的な特徴と使用方法を理解し、各ツールの強みと適した使用シーンを把握することを目的としている。応用編では基礎編で学んだツールを用いて実際のビジネス課題に取り組み、複数のAIツールを組み合わせた問題解決方法を学ぶことを目的としている。上級編では参加者自身の業務課題に対してAIソリューションを企画・実施し、AIを活用した問題解決プロセスを一貫して経験することを目的としている。このようなAIによるアンケート分析とビジネス提案のプロセスは、前回のレポートで示した基本的なAI活用とは異なり、より高度で包括的なアプローチを採用している。AIは単なるデータ分析ツールではなく、ビジネス戦略の立案や具体的な実施計画の策定まで行っている点が特筆すべき進化だといえる。