三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はインドでの新たな成長投資に本腰を入れている。大規模な出資案件を狙うことに加え、全世界のバックオフィス機能を担うインド拠点の人員を3000人程度に倍増させる方針で、グループ内企業への経営資源投入も拡大する。

MUFGの執行役専務で、アジア戦略を統括する板垣靖士氏がブルームバーグのインタビューで明らかにした。板垣氏はインドへの出資について、「コンベンショナル(伝統的分野)とデジタルの両方で、M&A(企業の合併・買収)が必要だ」と述べた。インドを含めたアジア全体で、1件当たり数千億円規模の投資案件もあり得るとした。

中国を抜き人口が世界1位になったインドは、今後もさらなる経済成長が見込まれる。フィンテック企業の活動も盛んなことから、日本のメガバンクグループが相次いでインド企業に出資しているほか、中東の金融機関なども同国市場に触手を伸ばしている。欧米も含めた世界中の金融機関を巻き込み、投資競争は激しさを増している。

ROE20%

板垣執行役専務(都内・10月28日)

MUFGはインドの出資先企業の自己資本利益率(ROE)を約10年で20%程度まで引き上げるとの目標を掲げる。板垣氏は、目標達成のためにはインドの伝統的な金融機関やデジタル企業へのM&Aと、その果実を回収することが不可欠だと説明した。

複数の関係者によると、MUFGはインドの民間最大手HDFC銀行傘下のノンバンク「HDBファイナンシャル・サービス(HDBFS)」への出資を検討し、今年前半には一時、詰めの交渉を行っていた。2600億円規模を出資する案が浮上していたものの、足元では交渉が停滞している。

板垣氏は個別案件へのコメントは控えた上で、アジア全体で「いくつかのパイプライン(候補案件)はある」とした。すでに出資している企業でも、先方の理解を得られれば、比率引き上げの検討を行うケースもあるという。

インドでの事業拡大は課題もある。ほかの東南アジアの国々に比べてMUFGの同国での経験値が低いと同氏は指摘。「われわれの関係が薄いところがあるが、待っていてはだめなので、飛び込んで経営やガバナンス(企業統治)をしていく中で知見を高めていく」と述べた。

他国で買収した企業もてこに融資以外の分野でも収益力の底上げを図る。MUFG傘下の三菱UFJ信託銀行は5月、約1000億円かけて年金や証券代行業務を手がけるオーストラリアのリンク・アドミニストレーション・ホールディングスを買収した。インドの証券代行分野で約1割のシェア占め、特に新規上場(IPO)に強みを持つ。

インドから世界のインフラ支える

2020年にインドで設立した「MUFGグローバルサービス」が欧米やアジアなど幅広い地域のグループのバックオフィス業務を一手に引き受けている。設立当初はシステム開発や保守などに業務領域が限られていたが、現在は事務や会計、人事、審査から金融犯罪対策に至るまで、あらゆる業務を担う。

板垣氏は、この拠点の人数を3年程度で現在の1500人規模から3000人規模に拡大すると明らかにした。「インドを拠点に世界中のインフラを支える。われわれにとって大きな楽しみで、資源を投入する」と期待を込めた。

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2024 Bloomberg L.P.