記事のポイント
・「様子見」「フリーハンド」が意識された模様
・最近の長期金利上昇の影響についても様子見
・ただし、インフレ予想の高止まりの可能性には警戒感
・12月も「様子見」としての25bp利下げへ
・FOMCは無風だがイベント通過で米金利は低下、BEI低下でパウエル議長も一旦安心か

「様子見」「フリーハンド」が意識された模様

FRBは11月6-7日のFOMCで、25bpの利下げを決めた(FF金利誘導目標は4.50-4.75%)。決定は市場の想定通りである。

声明文では、前回追加された「委員会は、インフレ率が2%に向けて持続的に推移しているとの確信を深めている」(筆者訳。以下同)という表現がなくなった。もっとも、パウエル議長は会見で9月の声明文は「最初の利下げのための試みだった」とし、「多くのフォワード・ガイダンスを行うにはまだ時期尚早だと考えている。つまり、私が述べたことにはかなりの不確実性がある。我々が歩んでいる道筋については、最終目的地はわかっているが、適切なペースはわからないし、最終目的地がどこなのかも正確にはわからない」と、声明文の変更に大きな意味はないことを強調した。

パウエル議長の記者会見は全体的にフリーハンドが意識され、「様子見」だったという表現が適切だろう。会見が約43分で終わったことも、言質を与えないよう慎重に対応したことの証左だろう。政府の財政政策について問われても「原則として、いかなる政権の政策や議会が策定した政策も、長期的にはFRBの2つの責務の目標の追求に影響を与える可能性がある。そのため、数え切れないほどの他の要因とともに、そうした経済効果の予測は、経済モデルに組み込まれ、その経路を通じて考慮されることになる」と、具体的に述べることはなかった。

12月の利下げについて問われても、「そのような決定はまったくしていない。政策金利は、先ほど述べたように、時間をかけてより中立的な水準まで引き下げるというプロセスにある」と、フリーハンドを維持した。

最近の長期金利上昇の影響についても様子見

パウエル議長は最近の長期金利の上昇について問われ、「債券利回りの上昇は我々も注視しているが、1年前の水準にはほど遠い。債券利回りはその水準を大きく下回っている。我々は注視している。状況は変化しており、最終的にどこに落ち着くか見ていきたい。どこに落ち着くかを本当に言うにはまだ早いと思う」「動きは主にインフレ期待の高まりによるものではなく、より力強い成長の可能性を反映したものであり、おそらく下方リスクはそれほど大きくないように見える。それが動きの理由だ」と、楽観的な姿勢を示した。また、「金融情勢については考慮している。もしそれが持続的で重大なものであれば、政策に確実に反映させる。しかし、今はその段階ではない。私たちはただ見守ってはいるが。繰り返しになるが、こうしたことは主にFRBの政策とは関係なく、経済の他の要因と関係している」とし、FRBが過度に市場を楽観視させているわけではないと主張した。