(ブルームバーグ):日産自動車が再び業績不振に陥り、人員削減や生産能力の削減などの再建策を打ち出した。米中など主力市場での競争激化だけでなく、ブランド力などに本質的な課題があるとの指摘も出るなど投資家の反応は厳しく、同社の株価は8日の取引で大幅に下落した。
日産は前日、今期(2025年3月期)営業利益見通しを従来計画比7割減の1500億円に下方修正した。米国や中国における販売低迷の兆しはあったが、市場予想を大幅に下回る水準まで引き下げられ失望売りが広がった。日産の株価は8日の取引で、一時前日比10%安の368.5円を付け、2020年10月30日以来、約4年ぶりの日中安値となった。終値は同6%安の385.2円だった。
また日本格付研究所(JCR)は、日産の格付け見通しをポジティブとしていたが、業績悪化や大規模なリストラの発表を踏まえて、クレジット・モニター(ネガティブ)対象とすると発表した。リストラ策実施に伴う業績・財務への影響や米国や中国事業の立て直しを含む中期的な収益力改善見通しなどを精査して格付けに反映させる方針としている。
日産にとって最大市場である米国で需要が高まるハイブリッド車(HV)を投入できていない同社は販売奨励金(インセンティブ)への依存度が高まり収益性が大きく悪化した。また、比亜迪(BYD)など現地勢のシェア拡大が続く中国市場では日産を含め海外勢は苦戦が続いている。今回示された今期販売計画では全ての地域で台数が前回予想から下方修正されており、不振は米中にとどまらない。
SMBC日興証券の牧一統アナリストは、今回発表された第2四半期営業利益や通期計画について「最近の販売不振を踏まえればサプライズともいえない結果」と指摘。依然、ブランド力の弱さや北米でHV不在の製品ラインアップが「本質的な課題」との見方を示した。
日産は今年3月に発表した経営計画で日産独自のハイブリッド技術「e-POWER(イーパワー)」を搭載したモデルを2026年度に米国に投入する予定としていた。日産の内田誠社長は7日の会見で、イーパワー搭載車やプラグインハイブリッド車の米国投入を中計よりも数カ月前倒しすべく取り組んでいるが、「来年度にいきなりそれができるかというと、正直できない」と述べ、既存の販売力やブランド力を再構築しながら立て直しを進めるとした。
カルロス・ゴーン元会長時代の拡大路線と決別し、近年は「販売の質」向上を進めてきた日産は同計画で販売台数の100万台上積みや利益率の改善を掲げたが、市場関係者からは高すぎる目標と危惧する声が上がっていた。販売不振により目標との乖離(かいり)が鮮明となる中、内田社長はこれらの目標を見直す考えを示した。
英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツのアナリスト、ジュリー・ブート氏はリポートで、日産が抱える問題は「人員削減や生産能力の削減で簡単に解決できるものではない」と述べた。かつて販売の低迷、過剰な生産能力、インセンティブへの依存といった問題を抱えていた日産の業績が回復した背景には円安や供給不足の反動による高需要などの恩恵があったとし、「現在の市場環境は以前ほど寛容ではない」と指摘した。
米国では関税引き上げを訴えてきたトランプ前大統領が大統領選に勝利しており、日産にとって新たな不透明要因となる。SMBC日興の牧氏は10月のリポートで、米国外の全ての国に関税が10%課された場合、日系メーカーでは日産はマツダに次いで業績への影響が大きいとした。内田社長はトランプ氏が返り咲いても同社の中長期的な取り組みの方向性は変わらないとした上で、動向を注視していく考えを示した。
(更新前の記事で2段落目の株価に関する記述を訂正済み)
(格付け変更の情報を追加して更新します)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.