元日本銀行理事の門間一夫みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストは、米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が当選したのを受け、日銀の金融政策の先行きに不確実性が一段と増したとの認識を示した。一方で円安が急速に進めば、早期の追加利上げもあり得るとみている。

門間氏は7日のインタビューで、トランプ氏が経済政策として大型の所得税減税や輸入品への追加関税を掲げていることなども踏まえ、「日銀だけではなく、世界中の全ての人にとって不確実性が高まった」と指摘。その上で、日銀の追加利上げの時期について、現状であれば「1月が一番高いと思うが、不確実性が高い」と語った。

日銀は、見通しに沿って経済・物価情勢が推移すれば利上げを進める方針。米国をはじめとした世界経済や金融市場の不透明感を背景に、先週の金融政策決定会合では政策金利を据え置いた。植田和男総裁は、米大統領選について「新しい大統領が打ち出してくる政策次第では新たなリスクが出てくる」と会見で発言しており、門間氏はリスクを意識せざるを得ない状況との見解を示した。

先月発足した石破政権も利上げには慎重だ。石破茂首相は就任直後に「個人的には」と前置きした上で、「追加利上げをする環境にあるとは思っていない」と発言。衆院選での与党の過半数割れで「キャスチングボート」を握る国民民主党の玉木雄一郎代表は1日のインタビューで、来年の春闘の動向を見極める必要があるとし、3月までは利上げをすべきではないとの考えを表明している。

門間氏は追加利上げを「焦ってやる理由はない」とする一方、日銀が早期利上げに動くのは物価の上振れリスクが高まる状況だとし、「唯一、円安が急速に進行する場合」を挙げた。円安進行による物価上昇で国民不安が高まれば、政治サイドからの利上げ要請が強まる可能性があると指摘。「7月に付けた1ドル=160円が目安にはなるが、世論や政治の反応次第ではその前でも追加利上げはあり得る」という。

その場合、7月の追加利上げ後に金融市場が大きく変動した教訓を踏まえて、日銀は丁寧なコミュニケーションに徹するとみる。日銀の金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場の予想で40%程度となっている次回の12月会合で追加利上げする場合でも、「サプライズの利上げはない。難しいがそれが中央銀行の仕事だ」と語った。

7日午後の東京外国為替市場の円相場は154円台前半で推移している。朝方に一時154円71銭と7月30日以来の円安値を付けた後、三村淳財務官の円安けん制発言や日銀の早期利上げ観測から円を買い戻す動きが優勢となり、153円台に上昇する場面も見られた。

(説明を追加して更新しました)

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