(ブルームバーグ):9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、政府によるエネルギー価格支援の復活で前年比上昇率が5カ月ぶりに縮小した。エネルギーも除くコアコアCPIは伸びが拡大しており、市場における日本銀行の追加利上げ観測は維持されそうだ。
総務省の18日の発表によると、コアCPIは前年比2.4%上昇と市場予想(2.3%上昇)を上回った。前月は2.8%上昇だった。電気・ガス代への政府補助金の影響でエネルギーの上昇率が6.0%に縮小したことが主因。一方、食料の伸びは米価格の上昇から3.1%と2カ月連続で拡大した。コアコアCPIは2.1%上昇と伸びが前月の2.0%から加速した。プラス幅拡大は2カ月連続。市場予想は2.0%上昇だった。
日銀は経済・物価情勢が見通しに沿って推移すれば、利上げで金融緩和度合いの調整を進めていく考えを堅持している。足元では、世界経済の不透明感の強まりや円安修正などを受けて、植田和男総裁は政策判断に「時間的な余裕はある」と発言している。今回のCPIの結果は日銀の利上げ継続姿勢をサポートする内容と言える。
第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、「政府支援で電気とガスの伸びが鈍化しているので、その影響でコアの部分が鈍化しているのは想定通り」と指摘。8-10月使用分が対象の政府支援が延長されても物価のトレンドには影響せず、「それで日銀の判断が変わるというものではない」と語った。日銀の追加利上げ時期については12月か来年1月とみているという。

コアCPIが日銀目標の2%を上回るのは30カ月連続。賃金動向を反映しやすいサービス価格は1.3%上昇と、前月の1.4%上昇から伸びが縮小した。宿泊料の上昇幅縮小が影響した。今年の春闘の平均賃上げ率が33年ぶりの5%超えとなった中で、賃金から物価への転嫁が進展するかが注目されている。
日銀は30、31日に金融政策決定会合を開催する。石破茂首相は政権発足直後の2日に植田総裁と会談した後、現在は「追加利上げをするような環境にはない」と述べた。その後は日銀の独立性を尊重する姿勢を示して軌道修正しているが、植田総裁の発言もあり、今回会合では政策金利を0.25%程度とする現行政策の維持が決まるとの見方が市場で広がっている。
総務省の説明
- 政府による電気・ガス価格激変緩和対策がなかった場合は、総合が3.0%上昇、コアは2.9%上昇。前年に行われた同様の対策もなかったと仮定した場合は、総合2.1%上昇、コア1.9%上昇
- 24年産新米も生産コストや運送費など諸経費の上昇が上乗せされ、価格が上昇。米類全体の価格は44.7%上昇し、1975年9月(49.5%上昇)以来、49年ぶりの上昇率
- コアCPI522品目中、上昇は394品目。前月の387品目から5カ月ぶりに拡大した。食料を中心に原材料や輸送コスト増加の影響を受けたとみられる品目が上昇に転じた
(総務省の説明を追加して更新しました)
--取材協力:氏兼敬子、照喜納明美.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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