ハリケーンは多くの場合、広大な海上を移動する間に徐々に勢力を強めていくが、最近では、驚くべき速さで熱帯性暴風雨から勢力を強めるものが増えつつある。

大型ハリケーン「ミルトン」は、熱帯性暴風雨からわずか1日で、風速は2倍の時速160マイル(約257キロメートル)に達し、5段階で最強の「カテゴリー5」へと勢力を強めた。その後、米フロリダ州に上陸する頃には、カテゴリー3まで勢力は弱まった。

気象学者は、こうした劇的な変化を「急発達」と呼び、この現象は気候変動によって、より一般化している様子だとしている。

「急発達」はどの程度一般的か?

米海洋大気庁(NOAA)によると、専門的な定義上、ハリケーンの風速が24時間以内に時速35マイル以上増した場合を急発達と呼ぶ。 急発達は過去30年間でより一般的になり、大型のハリケーンがさらに強くなる傾向にあることが、複数の研究で示されている。

近年、北米の沿岸で壊滅的な被害を及ぼした幾つかのハリケーンでも、急発達は起きた。2023年のハリケーン「オーティス」は、メキシコ太平洋岸のアカプルコに接近した際にカテゴリー5に発達し、少なくとも52人の死者を出した。22年には、ハリケーン「イアン」が急速に勢力を強め、まずキューバ、次にフロリダを襲い、150人余りの死者と1120億ドル(現行レートで約16兆6500億円)の被害をもたらした。

今年9月終盤から10月初めにかけ発生したハリケーン「ヘリーン」と「ミルトン」でも同様の現象が見られ、両ハリケーンはメキシコ湾の異常に暖かい海域を通過する際に急速に勢力を強めた。ミルトンの風速は時速180マイルに達し、その時点で2024年中で世界最強のハリケーンとなった。

急発達の影響は?

不意打ちは致命的で、高額な費用を伴う可能性があることを知っておくべきだ。急速に勢力を強めるハリケーンは、人々をいきなり襲い、壊滅的な結果をもたらすことになりがちだ。

20年にハリケーン「ローラ」がカテゴリー1から4へと24時間足らずで勢力を強めた際には、高潮の予測が11フィート(約3.4メートル)から20フィートへと急上昇した。ルイジアナ州の一部住民は、勢力の弱いハリケーンをやり過ごそうとしていたが、急きょ避難を余儀なくされた。

15年には、弱い熱帯性低気圧の予報に基づいて出港した貨物船エルファロ号が、その後24時間弱でカテゴリー4まで成長した巨大ハリケーンにより沈没し、乗組員33人全員が死亡するという悲劇も起きた。

変化の原因は何か?

ハリケーンがこれほど急速に勢力を強めている理由は、周知の事実だ。海水の温度上昇により増えた水蒸気が、ハリケーンに勢力を与える。また、暖かい空気はより多くの水蒸気を保持できるため、ハリケーンの最中に激しい降雨をもたらすようになる。海面温度の上昇は、風速を強めることもある。NOAAの海洋学者グレッグ・フォルツ氏はこうした現象について、「気候変動の影響によるものと知られている。海洋の温度上昇により、強いハリケーンがさらに強くなる」と指摘した。

米東海岸のハリケーンの温床となっているカリブ海とアフリカの間の大西洋は、この時期としては過去最高に暖かく、8、9月並みの気温となっている。ハリケーン「ベリル」は、大西洋で観測史上最も早い時期にカテゴリー5(最大風速時速157マイル以上)に発達した。

対応は可能か?

究極の問いは、気候変動を抑制するためにどのような対策が取られるかということになる。ただ、嵐の力学をより深く理解し、一層正確な予報を行うことで、今までよりもタイムリーな警告を発することはできる。

科学機関の国際コンソーシアムが運営する浮遊式の海洋監視システム「アルゴ」の性能向上は、予報の向上で重要な役割を果たしている。

ベリルが発生した際は、カリブ海のウィンドワード諸島に到達するかなり前から、米国立ハリケーンセンター(NHC)は、ベリルがカテゴリー3以上のハリケーンに発達する可能性があることを正確に予測できた。

原題:How ‘Rapid Intensification’ Transforms Hurricanes: QuickTake(抜粋)

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