(ブルームバーグ):金融市場を揺るがす可能性がある米国の消費者物価指数(CPI)の発表を日本時間の今晩に控え、投資家の円売り選好が高まりつつある。
米国で大幅な利下げ観測が後退し、ドルと米国債利回りを押し上げていることから、日本の大手金融機関はほぼ例外なく円安リスクを指摘する。米国のインフレ率が上昇して日米の金利差が再び注目されると、トレーダーは最も売りやすい通貨の一つである円の弱気ポジションを再び積み増す可能性がある。
「円売りは最も人気がある取引だ。依然としてキャリーが有効で、ヘッジファンドは円をショート(売り持ち)にする」と、ATFXグローバル・マーケッツのチーフ市場アナリスト、ニック・トウィデール氏(シドニー在勤)は語った。「米国の利下げ規模に疑問があり、投資家は現時点で円を空売りする傾向が強い」と言う。

10日の円相場は一時1ドル=149円55銭と、約2カ月ぶりの安値を付けた。みずほ証券、野村証券、三菱UFJ銀行は、ドル・円相場が8月1日以来の150円台に乗せるリスクを指摘。野村証の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストはリポートで、CPIが上振れた場合「初動はドル全面高でリスク心理の悪化が警戒される」と記し、150円台回復を試す可能性が高いとみている。
3カ月前には円安阻止のために市場介入を余儀なくされた日本の通貨当局が、今後介入に踏み切る可能性が警戒される。三村淳財務官は7日、「投機的な動きを含めて為替市場の動向は緊張感を持って注視していく」と述べた。 加藤勝信財務相は為替相場の「急激な変動は企業活動にもマイナスで、国民生活にもプラスにはならない」と発言した。
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シドニーのヘッジファンド、カララ・キャピタルの最高投資責任者、デビッド・ソクルスキー氏は「単純な答えは、円だけではないということだ。つまり、現時点では円よりも米ドルに焦点を当てるべきだ」と話し、「最も簡単なのは円を売ることだ」と続けた。
9月の米CPI統計では、中古車など一部の財で価格上昇圧力が見られるものの鈍化が示されるとエコノミストは予想している。その分、上方へのサプライズ余地は大きい。CPIが非常に強ければ、ドルは「150円台半ばまで一気に上がるだろうが、介入警戒感からすぐに戻る」とマネックス証券の債券・為替トレーダー、相馬勉氏はみる。
シンガポールのヘッジファンド、ブルー・エッジ・アドバイザーズも米国の経済指標発表までは一段の円安を視野に入れている。ポートフォリオマネジャーのカルビン・ヤオ氏は「ポジション調整が完了するか経済指標が軟化するまでは、変動は大きいものの米国金利は上昇基調だろう」との見方を示し、「ドル高円安だ」と述べた。
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