レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラがベイルート南部に構えている本部を、イスラエルが空爆した。ヒズボラの指導者ナスララ師が標的となった。対立を大きくエスカレートさせた格好になる。

イスラエル軍のハガリ報道官は27日、ベイルートにあるヒズボラの中央司令部に「精密爆撃」を実施したと動画で発表。同司令部は住宅建物の下に位置しており、なお結果を評価していると説明した。

イスラエルはナスララ師が空爆現場にいたと考えていると、イスラエル当局者が機密情報だとして匿名を条件に明らかにした。ナスララ師の所在は現時点で確認できていない。

レバノン保健省によると、6人の死亡が確認されており、犠牲者はさらに増える見込み。

ヒズボラが事務所や司令部を構えるベイルートのハレトフレイク地区は人口が密集する地域でもある。テレビ映像はオレンジと黒が入り交じった煙が立ち上り、懐中電灯を手にした救急隊員らががれきの中から生存者を探す様子を映し出した。

イスラエルはベイルート南部郊外への攻撃で、これまでに多くのヒズボラ幹部を標的にしてきた。

攻撃はイスラエルのネタニヤフ首相がヒズボラとの戦いを継続すると表明した後に発生し、米国が主導する停戦見通しに再び疑問符が付いた。

イスラエルは23日以降にレバノンを集中的に空爆。レバノン当局者によると、空爆で少なくとも子供50人を含む700人余りが死亡した。同国南部や北東部の地域からは、合わせて数万人が避難を強いられた。

ネタニヤフ首相は27日にニューヨークの国連総会で、「ヒズボラが戦争の道を選ぶ限り、イスラエルに選択肢はない。イスラエルにはこの脅威を取り除くあらゆる権利を有する」と主張。「われわれの全ての目標が達成されるまで、ヒズボラを弱体化させ続ける」と述べた。

米政府は今回のイスラエルによる攻撃について、「事前警告を一切受けなかった」と、国防総省のサブリナ・シン報道官が記者団に語った。ブリンケン国務長官は、米国がイスラエルの攻撃に関する情報を収集中だとした上で、この1週間のエスカレートにより、同地域および世界は「危険な瞬間」に直面していると警告した。

イスラエル、米主導のレバノン停戦案巡り協議継続-スタンス軟化か

原題:Israel Targets Hezbollah Chief Nasrallah in Beirut Airstrike (3)(抜粋)

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