米金融規制当局が新たにまとめた米大手銀行に対する資本規制強化案は、9%の資本要件引き上げを盛り込んでおり、当初の計画を大幅に下回ることが、事情に詳しい複数の関係者の話で分かった。金融規制当局が先に提示した規則案に広範囲の修正を加えることで合意した。

連邦準備制度理事会(FRB)や連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)の当初案では、予想外の損失や金融ショックへのクッションとして、バンク・オブ・アメリカ(BofA)やJPモルガン・チェースなど世界の金融システム上重要な銀行8行の資本要件について19%の引き上げを求めるとしていた。

FRBのバー副議長(銀行監督担当)

大手銀行側は昨年公表された当初案に反発し、激しいロビー活動を展開した経緯があり、新たな案はこうした反対を和らげる可能性がある。

FRBでは、パウエル議長がメンバーの広範な支持を集める目標を掲げており、それを果たすことになりそうだ。議長はまた、長期間に及ぶ法廷闘争を避けたい意向を銀行側に示していた。

FRBの担当者はコメントを控えた。

バーFRB副議長(銀行監督担当)が10日の講演で変更点について事前の説明を行う予定。FRBとFDIC、OCCは19日にも最大450ページに上る強化案の大幅修正を公表する見通しだと、ブルームバーグが先週報じていた。

米当局、銀行の資本規制強化案の大幅修正を今月にも公表へ

2023年7月に当初案が公表された資本規制強化は、08年の世界的金融危機への対応として、銀行資本規制「バーゼル3」に絡んだものだ。FRBはその後、大幅に緩和した内容を他の規制当局に提示し、一部の当局者からは警戒の声が上がっていた。

パウエル議長は先に、修正案が公表されれば、60日間の意見公募の対象となり、来年に入るまで最終的な導入はないだろうと述べている。

FRBで銀行政策担当の弁護士を務めた経歴を持ち、現在はミシガン大学准教授のジェレミー・クレス氏は、銀行側が意見公募期間の延長を要請するのはほぼ確実だと指摘。さらに、規制当局が規則を最終的にまとめることができても、共和党大統領候補のトランプ前大統領がホワイトハウス返り咲きを果たせば、導入が危ぶまれる可能性もあると話した。

このほか、「共和党が議会で多数派となれば、議会審査法(CRA)に基づく不承認共同決議で規則を覆す可能性や、規制当局が順守日程を先送りして最終的には撤回する可能性も考えられる」とクレス氏は説明した。

一方、資本規制強化の対象となる個々の銀行が修正案で満足する保証はない。銀行業界からはトレーディングリスクの扱いや、年次ストレステスト(健全性審査)との関わりなどを巡って広範囲にわたる懸念が示されている。

ただ、ニューヨーク連銀で勤務した経歴がある金融リスク・銀行コンサルタントのマイラ・ロドリゲス・バヤダレス氏は、「個々の銀行が単独で修正案に反対を打ち出す公算は極めて小さい」と分析。単独で動いても「助けにならない」のではないかと述べた。

原題:Biggest US Bank Capital Hike Chopped in Half in Latest Plan (1)(抜粋)

(識者コメントを追加して更新します)

--取材協力:Katherine Doherty、Sally Bakewell.

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