世界市場の混乱は、米国の高リスク企業の一部の借り入れコスト低下や借り換えなどを後押ししていた夏のデットファイナンス・ブームを終わらせる恐れがある。

トーンの変化は5日に鮮明になった。シーワールド・パークス&エンターテイメントは15億5000万ドル(約2240億円)のタームローンの借り換え計画を棚上げした。SBAコミュニケーションズは23億ドルのタームローンの金利更改を延期した。6日にはフォーカス・ファイナンシャル・パートナーズの36億5000万ドルのタームローン・パッケージが先送りされた。市場参加者はさらに低格付けの案件が延期されると予想している。

また、ジャンク級(投機的水準)格付け社債のリスクプレミアムは2023年11月以来の高水準に急上昇し、レバレッジドローンの価格は5日に今年最低水準を付けた。

債務の金利見直しで借り手がより良い条件を確保し年間利払いが24年初めから5月までに14億ドル余り節約できた今年の早い時期とは状況が劇的に変化した。転機は2日に発表された米雇用統計で、雇用の伸びが従来予想より速いペースで減速していることを示唆。リセッション(景気後退)懸念が高まり、米金融当局には利下げ加速圧力が高まった。

オブラ・キャピタルの米レバレッジドファイナンス部門責任者、スコット・マックリン氏は、「負債比率の高い企業について投資家は、キャッシュフローにおける金利低下の大きさと、景気減速による収益減少をてんびんにかけるだろう」と予想。「こうした正味の影響に関する計算では、景気変動の影響を受けにくい借り手にはプラスに、景気変動の影響の大きい借り手にはマイナスになろう」と分析した。

レバレッジドローン市場におけるセンチメントの変化は著しい。ほんの2、3週間前までは、最大の買い手であるローン担保証券(CLO)の運用会社は、取引に広く門戸を開き、購入する新しい資産を見つけるのに苦労するほどだった。

しかし今では、個人投資家が逃げ出している。ブルームバーグの集計データによると、上場投資信託(ETF)の「インベスコ・シニア・ローンETF」は8月2日に約4億9000万ドルの資金が引き揚げられ、運用資産は76億9000万ドルと、5月6日以来の低水準になった。

レバレッジドローンに投資するファンドは、23年3月の米地銀危機以来最大の資金流出に見舞われている。JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーのネルソン・ジャンツェン氏によれば、8月1日から5日までの資金流出は推定14億4000万ドルに上り、そのうちアクティブ運用ファンドとETFの合計は6億8200万ドルだった。

 

 

原題:Risky Borrowers Discover Doors Are Closing in Bond, Loan Markets(抜粋)

--取材協力:Neil Callanan.

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