3メガバンクグループの2024年4-6月期(第1四半期)決算が2日、出そろった。連結純利益は合計で前年同期比16%増の1兆2166億円となり、今期(25年3月期)の計画(3兆3100億円)に対する進捗(しんちょく)率は38%に達した。

今期は、日本銀行が3月にマイナス金利解除を決めてから初めての四半期決算だ。一般に、利上げは預金と貸金の利ざや改善などで銀行収益にプラスに働く。日銀が7月31日に追加利上げを決めたことで、大手行収益へのさらなる寄与に市場の関心が集まる。

第1四半期では、預金と貸出金の収支が含まれる資金利益は3メガバンク全てで増加した。本業のもうけを示す連結業務純益の合計は前年同期比23%増の1兆4756億円となった。

 

三菱UFJフィナンシャル・グループ財務企画部CFO室長の原隆行氏は、「日銀の政策金利の変更などが資金利益の底上げに寄与している」と説明。「国内の貸出金利ざやは全体のトレンドとしては上昇している」と述べた。

MUFGでは3月のマイナス金利解除と追加利上げにより最大800億円程度の資金利益押し上げ効果があると試算。三井住友フィナンシャルグループ(FG)も決算資料で、資金利益で約1000億円、このうち今期業績への寄与度は7割程度になるとの見方を示した。

17年ぶりの利上げにより到来した「金利のある世界」では、低コストで資金を調達できる預金集めも重要になる。3メガバンクグループの傘下銀行などは日銀が追加利上げを決めた31日に、そろって普通預金の金利を0.02%から0.1%に引き上げると公表した。0.001%だったマイナス金利政策下に比べると実に100倍の水準だ。

一方、利上げは借り入れ側には利払いの増加要因となる。みずほフィナンシャルグループ財務企画部長の峯岸寛氏は、「中堅・中小企業、あるいはセクターによっては利上げが波及することもあり得る。資金負担も含め銀行には丁寧な対応が求められる」と述べた。貸し倒れなどに備えた与信費用の動向にも注意が必要だ。

SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは、「金利上昇が大企業の与信費用に影響するのには少し時間がかかる」との見通しを示し、「3メガバンクは通期の業績予想を達成できるだろう」と予想した。

政策株解消も増益要因に

資本効率の改善などの観点から進む株式持ち合い解消の動きも銀行業績の追い風になりそうだ。トヨタ自動車は7月23日、株式公開買い付け(TOB)を実施してMUFGや三井住友FGが政策保有として持つトヨタ株を取得すると発表するなど解消の動きは加速している。

SMBC日興証券の佐藤雅彦アナリストはリポートでMUFGについて、「第2四半期以降の政策株売却益などに期待する」とし、業績の上振れや自社株買いに注目している。

MUFGの原氏は「売却益が出ることは確かだ。自己資本などを考えた上で、余剰部分は成長投資、株主還元、健全性に振り向けていく。バランスをみながら考える」と話した。

三井住友FGは25年度までの3年間で2000億円の政策株削減を目指す。ただ、トヨタ株も含め売却応諾済みの残高を合わせると2650億円になり、目標をクリアしている。このため同社は24年度上期での当初計画達成を目指し、今年11月には新たな削減計画を公表する予定だ。

 

 

(三井住友FGの政策株売却動向や専門家コメントを追加して更新します)

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