(ブルームバーグ): 元日本銀行理事の早川英男氏(東京財団政策研究所主席研究員)は、足元の日本経済が一時的な足踏み状態にある中、日銀が今月末の金融政策決定会合で追加利上げを行う可能性は低いとの見解を示した。一方で、国債買い入れの減額はしっかりした規模になるとみている。
早川氏は17日のインタビューで、「7月の再利上げはない。動けば強引に見えてしまう。正攻法で言えば、ここは一回休みだろう」と語った。この段階で急いで利上げに動けば、「円安を気にして対応したと見えてしまう」とも述べた。
その理由として、日本経済は「ソフトパッチ(軟調局面)の状態から抜け出せていない」と指摘。個人消費が国内総生産(GDP)ベースで4四半期連続のマイナスとなるなど物価高の影響で力強さを欠いた状態が続き、自動車メーカーの認証不正問題もあって生産も弱く、「二つの大きな誤算が生じている」との見方を示した。
日銀は6月会合で国債買い入れの減額方針を決定し、次回会合で「今後1-2年程度の具体的な減額計画」をまとめることを決めた。早川氏の発言は、日銀が30、31日の会合での利上げを見送るという、日銀ウオッチャーたちの大方の見方を支持するものだ。

国債買い入れの減額計画に関しては、7月の利上げ見送りを前提に「しっかりしたものになるだろう」とみている。財務省が円買い介入に乗り出している中では、「利上げをせず、国債買い入れの減額も腰を引けた内容になることで、また円安になってしまうのはさすがにまずい」という。
具体的な減額幅は分からないとしつつも、月間買い入れ額を現在の6兆円程度から、2年程度で段階的に3兆円程度に半減させる可能性があると指摘。その場合、年間で36兆円の買い入れ縮小となるが、日銀の保有残高が足元で約580兆円に膨らんでいることを踏まえれば、「長期金利は上がるが、それほど大きく上がるわけではない」との見方を示した。
一方、日本経済の先行きに「悲観的になる必要はない」という。5月の毎月勤労統計調査(速報)では所定内給与が共通事業所ベースで2.7%増に拡大しており、実質賃金のプラス転換は「そう遠くない」とみる。今年の高水準の賃上げや定額減税などが反映される「夏場の数字が重要だ」とし、個人消費の改善など「数字がそろってくれば、9月会合での追加利上げもあり得る」としている。
各種推計に基づく中立金利の中央値を1.5-1.75%とすれば、追加利上げは比較的速いペースになることが見込まれるとし、現在0-0.1%程度の政策金利は、来年半ばにはゼロ%台後半に達する可能性があると指摘。もっとも自然利子率や中立金利は相当な幅を持ってみる必要があり、「その後は様子を見ながらゆっくりしたペースにならざるを得ない」と述べた。
More stories like this are available on bloomberg.com
©2024 Bloomberg L.P.