舞台は山口県北部、日本海に面した阿武町。ハートの模様は、国道191号線を島根県方面に向かう車窓で確認できました。

緑豊かな山肌にくっきりと浮かぶ黄色のハート模様。通称「ハートのイチョウ」です。イチョウの木がハート型に密集して生えているため、このような形に見えるんだそうです。これは誰かが仕掛けたことなのか・・・

取材班、阿武町を直撃取材です。


阿武町農林水産課 小田慎也さん
「当時の土地の所有者さんが、森林組合に委託をして植えられたと聞いています。昔のことなので、お亡くなりになっていると思います」

詳細は不明・・・ただ、心当たりがあるということで、親族の方と繋いでいただき、調査を続けたところ、小野貴邦さんという方が植えたことが判明。貴邦さんは亡くなられていて、東京在住の娘さんにたどり着くことができました。

小野貴邦さんの娘・雅子さん
「『あの山だけは絶対に手放してはいけない!』と言っていたのは、すごく覚えていて、先祖を敬う、先祖から言われたことを守り通すというところじゃないでしょうかね」

雅子さんによると、父の貴邦さんは1943年阿武町生まれ。東京大学を卒業し、
都内でマーケティング会社を立ち上げたそうです。そんな貴邦さんが、イチョウの木を植えたのには訳がありました。戦後、土地を守り続けた貴邦さんの母・華枝さんの存在です。雅子さんにとっては祖母にあたります。

雅子さん
「子どもを抱え、夫を早くに亡くし、女手一人で。そして山も守らねばならぬ。相当大変だったんじゃないかなと思って。そして、そんな祖母に手厚く育てられた父は、母を本当に愛していただろうし」

秋、イチョウが色づいたところは、祖母が守ったところ。感謝の気持ちを込めて、貴邦さんがイチョウの木を植えたんだそうです。

雅子さん
「小野家の山、敷地すべてにイチョウを植えたのですが、なぜか、あそこの部分だけハート型に紅葉した」

そう、ハート型は、山一帯に植えたイチョウが、偶然形づくったものだったんです。

雅子さん
「本当に父はハートフルな人だったので。そういう魂って隠せないものなんだなって」

この山の頂上には、祖母・華枝さんの像が置かれています。そこには、貴邦さんの字で「向こう1000年、この山に生えているイチョウを切ることは1本たりとも許さない」と書かれています。

人口およそ3000人の阿武町。夫婦島を臨むモニュメント・恋人の鐘が恋人の聖地に認定されるなど、県内最高峰のハートフルな場所でもあります。

思いが生んだハートの奇跡。イチョウの木とともに、深く、根付いていくことでしょう。