町工場が自社の技術力を駆使していかに「くだらない」ものを作るかを競い合う「くだらないものグランプリ」。今月15日開催されるこの技術と笑いの祭典に県内からは2社がエントリー、「くだらないもの日本一」を目指します。
鬼瓦職人が手作りしたヘルメットは、重さ3キロという重量感が特徴です。
おにぎりから苦手な具だけを抜くキッチン用品「グナッシー」は去年のグランプリです。
コロナ禍の日本に町工場から元気を届けようとおととしから始まった「くだらないものグランプリ」。
それぞれの町工場が誇る技術でいかに「くだらないもの」を作るかを競い合う大会で、ことしは全国から21社がエントリーし今月15日に開催されます。
この笑いと技術の祭典に3年連続で参戦しているのが、アルミの金型を製造する高岡市の「フジタ」です。
今回フジタが開発したのは。
フジタ 盛田玲太さん:
「このメリケンサックです」
メリケンサックとは、こぶしにはめて使う金属製の武器ですが、その形状とは裏腹に作品のコンセプトは愛と平和にあふれています。
フジタ 盛田玲太さん:
「こちらは装着した人同士が引かれ合ってくっつくんですよ、メリケンサックが。そうすると恋人つなぎになっちゃうっていう作品になってます」
名付けて「LOVELOVEメリケンサック」。
発案者の盛田玲太さんは、2か月間、恋人つなぎを徹底研究。つなぎやすさと密着度を高めるため、メリケンサックの形状やマグネットの配置など試行錯誤してきました。
フジタ 盛田玲太さん:
「これをど真ん中にすると合掌になる。マグネットの位置がずれているから、指がずれる。それをもうひたすら考えました」
加工では最新の5軸加工機を使用し、複雑な形状を削りだすフジタの金属加工技術を存分に発揮しています。
この「LOVE LOVE メリケンサック」、ベトナムからの技能実習生ルオン・ゴック・タンさんと試してみると。
技能実習生 ルオン・ゴック・タンさん:
「誰か恋人がほしい」
工場の重鎮にも試してもらいました。
フジタ 盛田玲太さん:
「ハートとハートをやんわり・・・」
2人:
「おー」
フジタ 飛騨祐介副工場長:
「単に恥ずかしさもありますけども。どうでしょう?」
フジタ 北山剛章工場長:
「力を合わせてこれからも盛り上げていきましょう」
工場長と副工場長、初めての恋人つなぎです。
フジタ 盛田玲太さん:
「くだらないものグランプリの作品を通して、いろんな人がクスッと笑顔になればいいなと考えていたんですけど。笑顔は笑顔でも照れた感じの笑顔ってすごく素敵だなと思って」
去年の大会には、17インチの高級タイヤのホイール部分を独自加工した「ホイール腹筋ローラー」で挑戦しましたが、結果は惜しくも2位。
今年の目標はもちろん悲願の優勝ですが。
フジタ 盛田玲太さん:
「あわよくば優勝していろんな人に使ってもらって、いろんな人をはにかませたいなと思いますね」
一方、ことし初参戦するのが、射水市の「アルミファクトリー」。産業機械や自動車の部品などアルミの部品加工に特化した会社です。
「アルミファクトリー」が開発したのがこちら。
アルミファクトリー 棚元優太さん:
「これはすべてアルミで作られているアルミの竹馬です。通称「アルミ馬」です」
上司たちに、昔ながらの遊びで子どもの頃のような元気を取り戻してもらいたいと開発したということですが、なぜか3Dスキャンで忠実に再現された「足の裏」がついています。
アルミファクトリー 棚元優太さん:
「心も体も元気にしようっていうコンセプトで竹馬を作っているので、この足の裏に今から足ツボをつけることになります」
まだ未完成ですが、心の元気は竹馬で、体の元気は足ツボへの刺激で取り戻そうという作品です。
肝心の「足ツボ」はというと。
アルミファクトリー 吉本正浩さん:
「今肝臓とリンパ腺と十二指腸と胃ですかね」
効能も考えながら、現在、慎重に設置ポイントを調整しています。
アルミファクトリー 吉本正浩さん:
「こういうところはまじめにやっています」
上司を元気にしたいというのが「アルミ馬」のコンセプトなので、上司の川浪常務に試してもらうと。
アルミファクトリー 川浪憲之常務
「ちょっと疲れますね。ダイエット器具にちょうどいいかもしれません」
アルミファクトリー 棚元優太さん:
「これ裸足になってツボが付くと、たぶんよっぽどの人じゃないと乗れない・・・」
アルミファクトリー 川浪憲之常務:
「足だけに力を入れてバランスを考えてなかったんね」
アルミファクトリー 棚元優太さん:
「そうですね、こんなに重くなると思ってなかった」
一見ばかばかしいものづくりに、若手とベテランが一緒に取り組んだ成果については。
アルミファクトリー 川浪憲之常務:
「若い世代と年寄り世代が一緒に考えてものづくりするっていうのはあまり通常の生産ではあり得ないことなんで、コミュニケーションも取れるし、いろんなことが言い合える場ができたと思います」
アルミファクトリー 棚元優太さん:
「こういうアイデアがひとつあれば全部社内で作れちゃうっていう。例えば、生まれたばかりの赤ちゃんの足とか手形をアルミで一生残してあげるとか。いいきっかけになったと思います」
「くだらないもの」と真剣に向き合う中で、それぞれの町工場の底力が輝きを放ち始めています。
これまで優勝したのはいずれも愛知県の会社。「くだらないもの日本一」の栄冠を富山に持ち帰ることはできるのか、決戦は10月15日です。
補足情報:
「くだらないものグランプリ」は、14日までインターネットによる事前投票中。本番15日の各社のプレゼン合戦は愛知県のホテルからユーチューブで生配信され、視聴者と審査員による投票で「くだらないもの日本一」が決定します。