「ばあちゃんが写ってる」
1枚の写真を涙ぐみながら見つめる女性がいました。数年前に91歳で亡くなった義理の母親が写っているというのです。エンリコさんが気仙沼市内の路地で撮影した1枚には、高齢の女性が振り向きざまに、少し驚いた表情でカメラを見つめています。

写真展に訪れた女性:
「(親族から)ばあちゃんが写っているぞと言われて来てみました。懐かしいよね。私も写真撮っていたけど、これ知らない人に撮られてちょっと緊張している。ばあちゃんから一度も聞いていなかったけど、びっくりしました。写真っていいですよね、思い出せて」

作業場でカキむきに打ち込む女性たちや気仙沼みなとまつりで披露される太鼓の演舞。カメラは、復興事業が進む港町の生き生きとした姿を捉えています。会場には多くの人が訪れ、作品に見入っていました。

会場を訪れた人:
「元気な人たちがいっぱい写っているのもうれしい。知っている方々もいっぱい写っていていいなと思います。気仙沼という街を見つけてくれて、写真で記録に残してくれることは素晴らしいし、ありがたいです」

会場ではエンリコさんのパートナーでウクライナ人ピアニストのジャンナ・スタンコヴィッチさんによるピアノの演奏も披露されました。気仙沼市岩井崎にある竜の形をしたマツの木「竜の松」をモチーフに作り上げた一曲で、震災復興と平和への祈りが込められています。

イタリアのローマから7年間、宮城県気仙沼市に通い続けているエンリコさんですが、取材活動はこれで終わりではありません。今後は、地元のマグロ船などに乗り組むインドネシア人の船員たちを撮影したいと考えています。

エンリコ:グラツィアーニさん:
「気仙沼にはインドネシアの社会があって、漁業を通じて生活し独自のコミュニケーションを持っている。そこに切り込んでいきたい。水産業について自ら船に乗って現場を撮影してみたい。このまま訪問を続けることで、気仙沼の街は次はどう変わっているのか、予期せぬ楽しみがあります」

次回は10月の来日、そして気仙沼市内での撮影を計画しているということです。写真家として作品展を開いたエンリコ・グラツィアーニさん、地元の人たちとも気さくに交流する姿が印象的でしたが、実はイタリア国立核物理研究所の上級研究員で、2012年には「ヒッグス粒子」の発見にも貢献するなど物理学者として第一線で活躍しているスゴイ人でした。