みなさん、健康診断で「血糖値の数値が高い」と指摘されたことはありませんか? 血糖値が高いと糖尿病の危険性があるということで、浜松市東区にある「きくち内科クリニック」の菊池範行院長に、SBSラジオ『IPPO』パーソナリティの牧野克彦アナウンサーが聞きました。
糖尿病とはどんな病気?
牧野:まず、糖尿病とはどんな病気なのか教えてください。
菊池:糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが低下した結果、体内の栄養素がうまく利用されず、血液中のブトウ糖が増えてしまう病気です。血糖値とは、血液中のブドウ糖濃度を指しますので、つまり血糖値が高くなっている状態をいいます。
現在、日本には約1000万人の糖尿病患者がいて、さらに糖尿病予備軍も約1000万人いるといわれています(国民健康・栄養調査報告)。
牧野:怖いのが、自覚症状がほとんどないということですよね。
菊池:糖尿病は初期から中期の段階では、まったく症状がありません。ですので健康診断で糖尿病と診断されてもピンとこなくて、そのままにしてしまったという人もいるようです。
自覚症状がない糖尿病。治療をしないとどうなる?

牧野:糖尿病をそのままにしてしまうと、どういうリスクがあるのでしょうか。
菊池:糖尿病は症状のない病気ですが、血糖値が高い状態で5年から10年が経過しますと、体のあちこちに障害が出てきて、いわゆる合併症(余病)が起こってきます。例えば、神経・眼・腎臓の障害のほか、脳梗塞や心筋梗塞など直接生命を脅かす病気もでてきます。
それ以外にも糖尿病の患者は、がんや認知症、歯周病などにもかかりやすいことが知られています。さらに、新型コロナウイルス感染症も重症化しやすいなど、糖尿病はまさに「万病の元」といえる病気なのです。したがってあまり症状のない糖尿病の治療では、合併症を防ぐことが目的になります。
牧野:そもそも血糖値が高くなる、インスリンの働きが低下する原因は何でしょうか。
菊池:もともと、日本人は欧米人と比べてインスリンの出が悪い傾向にあり、糖尿病になりやすい体質だといえます。そこに、食べ過ぎや脂肪分の取り過ぎ、運動不足、肥満、ストレスなどのよくない生活習慣が加わると、インスリンの働きが低下しやすくなることがわかっています。
血糖値を下げるには?

牧野:では血糖値を下げるにはどうすればいいのでしょうか。
菊池:先ほどお伝えした悪い生活習慣を、よい生活習慣に変えていくことが大切です。
食事はそれぞれの患者さんの体格や活動量に応じた適切なエネルギーを取れるよう、食事の量や栄養バランスを考えたものに。肥満の方の場合は、減量も必要になってきます。
運動不足の方には、歩行などの有酸素運動を心掛けてもらうことになりますし、食事や運動習慣を改善しても血糖が高い場合は、薬を使用することになります。
自分の血糖値をきちんと把握しよう!

牧野:自分の血糖値を把握しておくことも大事だと思うのですが、どうすればいいですか。
菊池:まだ糖尿病になっていない方の場合は、毎年しっかり健康診断を受けて、血糖値を測ること。糖尿病や予備軍の方は、月に1回程度かかりつけ医を受診し、血糖値や過去1~2カ月間の血糖値の平均を表すグリコヘモグロビンを測定してもらうことになります。
ただ、糖尿病がある程度進むと血糖値の変動が不安定になるので、その場合は自分で日々の血糖値を測定する必要があります。
それもこれまでは自分で指先に針を刺し血液を測定器につけるという方法で患者さんに少なくない負担がありました。それが最近、条件があえば保険適用になる「FreeStyleリブレ」という負担の少ない血糖測定装置が出てきたんです。
牧野:それは刺さなくてもいいんですか。
菊池:はい、直径わずか35mm、厚さ5mmの円盤状のセンサーを二の腕に装着するだけで、服の上からでも、スマートフォンをセンサーにかざせば測定ができるんです。
これまではだいたい1日に1回、多くて4回くらいしか測定できなかったのが、何回でも測ることができるようになりました。センサーは最長14日間(2週間)、毎分測定し、15分ごとに情報を保存しています。
牧野:医療の進歩は本当に目覚ましい! 糖尿病治療の現場も変わってきているんですね!
菊池:こういった新しいシステムを使うことで、患者さんの痛みや負担が軽減され、最終的には糖尿病患者さんの合併症が減り、健康な人と変わらない人生を送ることができるようになればと思っています。