「長野県でね、一番長いんですよ、17年いる教員長野県にいないんですよ、目の上のたんこぶ」

松本蟻ケ崎高校の書道教諭大澤一仁さん64才。
そのユニークなキャラクターでいつも周りを笑顔にします。
教壇に立って40年以上。
「書」の文化を教える教諭であり、日展の入選回数、20回を誇る書道家でもあります。

伝統を重んじる流派で学び、当初は、「書道パフォーマンス」には否定的でした。
「僕が最初反対してたものですからきっちり字を書くそういうことに徹しようと」
それでも、毎年入部してくる生徒たちのあこがれは、「書道パフォーマンス」。
その情熱に応えないわけにはいきませんでした。
大澤先生と部員が目指してきたのが高校日本一。

そして何より、地域を元気にすることです。
コロナ前には、年間60以上のイベントに出演。
地域を盛り上げてきました。


その浸透ぶりは、松本の街を訪れれば一目瞭然。
あちらこちらで彼女たちの作品を目にします。
銀行に飾られた巨大作品。
さらには工事現場にも。
蟻高書道部のラッピングバスが街を行きかいます。
「書く喜び、作品が出来上がったときはなるべくほめるようにしているこれだけ頑張ったからって充実感が出るようにしてます」
そんな大澤先生が、顧問を退くと明かしたのが2022年秋のことでした。
「僕ももういい機会だから、これで3連覇で次に譲ろうと言って、「いよいよ先生辞められるんですねとか京都の方からも手紙頂いて『先生ご苦労様でした』って、歴代最後に卒業式の時に各代が作ってくれて…それぞれ思い出があって」

ところが、「君子は豹変す」のごとく、辞意を撤回。
なんでも、別の学校の先生に後を託そうと思ったものの、うまくことが運ばなかったんだそうです。

「完全なオオカミ老人になって。嘘つき老人の典型辞めるに辞められないんですよ、後継者いなくて、それが現実」
大澤先生とは、どんな指導者なのでしょうか?
書道部OGの1人に会うことができました。
栁澤ほなみさん22才。
5年前の全国大会で、パフォーマンスの構成を担当。
あと一歩のところで、優勝を逃しました。
「(来年もやると思ってました?)思ってました、私の代の時、(先生が)還暦で定年退職ってときだったので私たちと一緒に卒業するって感じだったんですけど「私たちの時から今年で辞めるって言ってたので、辞められないなって」
「京都行ったんだよ、外国人の要人が40人ぐらいて…」
(部員)「そしたら、その人うちの母だったんですよお」

(部員)「たまに普通におじさんみたいなところがあって、いつ見てもあきない先生です」
辞任の話は消えたものの、先生には悩みの種が…。

「こうやってカミさんと並んで席ついた瞬間に『あなたいつ辞めるの!家の草むしりとかあなたしない分私がこんな苦労している辞める辞めるっていって辞めないのはどういうことだ』って毎日言われてますよ」
(栁沢ほなみさん)「高校時代私が体調崩したことあるんですがそういう時も心配して面倒みてくれて、今もいろんな話、仕事の話もなんでも話せるので父親じゃないけど頼りになる存在、ああいうキャラクターだからこそみんなが1つにまとまりやすいんじゃないかなって」

部員ひとり1人が輝くパフォーマンスを。
4連覇を目指して、「蟻高書道部」の新たな年が始まりました。