毎年春に行われる賃上げ交渉=春闘が始まりました。
歴史的な物価高が続き、政府も賃上げを求める中、実現に向けた課題はどこにあるのでしょうか。
きのうから事実上のスタートを切った今年の春闘。
焦点は、「物価高の割合を超える賃上げ」で、連合はあわせて5%程度のアップを要求。
経営側の経団連も賃上げを強化し、基本給の水準の引き上げ=ベースアップを前向きに考えるよう会員企業に要請しています。

(介護職・正社員)「実感できるくらい上がってくれるのを期待します」
(飲食業・正社員)「飲食業界自体が人が少なくて、個人の負担がすごく大きいからそれぞれお金で返してもらえるととてもありがたい」
(自営業)「不満ためちゃうと思うんで、離職率とか考えると上げておいた方がいいとは思うんですよね」
30年間上がっていないと指摘される日本の賃金。
1992年の平均年収が455万円だったのに対し、2021年は443万円で、むしろ減っています。
さらに、雇用の非正規化によって、賃金が上がりづらい構造も…。

(介護職・パート)「正社員からパートになったので、もともとあったものが減っているので、賃上げされても微々たるものかなって…、子供ができても時間に融通をきかせてもらえて正社員に戻れるなら一番ありがたいですけど」
(製造業・正社員)「大きな会社は空気を読んだこと(賃上げを)するんだろうなと推測しますけど、ほとんど雇用の大半は中小企業ですので、その部分ていうのが現実問題どうなのかなというのが、やっぱり難しいとは思います」
今年の春闘に向けて連合長野は10年連続で、ベースアップを求める方針を決定。
労使で賃上げを目指すとともに、行政による中小企業への支援策も必要だと指摘します。

(連合長野・根橋会長)社会的な機運が高まっているのは実感している、(賃上げが)厳しいところにはしっかりと政策の光を当てていくこと、そういった意味では政府、経済団体、労働団体がそれぞれの役割を意識した取り組みと結果が求められると考えています」
上田市の宮下商事、長野冷蔵倉庫。
野菜や果物、加工食品などを冷蔵庫や冷凍庫で保管し、食品業者やスーパーに出荷しています。
倉庫の中はおよそマイナス20度。
温度を保つために24時間365日、冷気を送る機械を稼働し続けています。
70年以上、冷蔵倉庫業に携わる宮下秀司(みやした・ひでじ)社長90歳。
電気代高騰の影響を受ける中、賃上げについては…。

「厳しいですよ、電気料は仕入れの値段です、仕入れが5割上がっちゃってるんだから」
おととし、月80万円台から160万円台だった電気料金は、去年、110万円台から240万円台に上昇。
去年1年間の電気代は2000万円を超え、おととしから実に4割以上がりました。
「1月は60%ぐらいになるのでは、今期は赤字になると思います」
5人の従業員を抱える宮下社長。
厳しい経営環境の中、従業員の生活を守ろうと、先月、一人当たりの月給をおよそ7000円上げました。
「上げざるを得ないです今の状況では、会社とともに生きているお互いに」
会社では市の補助金も活用し、4つある倉庫のうち1棟で電気代をおよそ40%抑えられる新型の冷蔵機械を導入。
固定資産税が3年間免除される制度も使うなどし、何とか賃上げを決断したといいます。
電気代が値上がりする中、経営を改善するには、倉庫の保管料を上げる「価格転嫁」が必要ですが、間単に上げることはできないと話します。

「(値上げは)今度は客の奪い合いになってしまう、これが一番恐ろしい」
会社では今年4月から5月にかけ保管料の値上げを予定していますが、先行きは見通せません。
「保管料上げなければ潰れますよ、(保管料を)給料だけの分を上げられる上げられないかが大きな課題、従業員に言いづらい話だけど(給料を)このくらいにしてくれないかという風になってしまうかも」
厳しい経済環境が続く中、プラスの循環を社会全体でどう生み出していくのか、いま、正念場を迎えています。