江戸時代から続くと言われ国の重要無形民俗文化財に指定されている長野県野沢温泉村の道祖神祭りが15日夜、行われました。

伝統をつなぐため、炎と対峙する男たちの姿を追いました。

道祖神祭り、当日。

午前中、野沢温泉村では社殿づくりが進んでいました。

高さ18メートル。

木と縄で骨組みを作り、釘を一切使わずくみ上げられる、祭りのシンボルです。

野沢温泉村の道祖神祭りは新型コロナの影響で2021年は戦後初めて中止に。

2022年は観覧を地元の住民に限定しました。


2023年は、3年ぶりに村外からの宿泊客も祭りを楽しめるとあって、多くの人が社殿づくりを見守りました。

(オーストラリアから)「火祭りのことを聞いてスキーも好きだから見に行かなきゃと思って来た」

(神奈川から)「ものすごくここ大勢の人でね若者たちが多いんですよねここはねそれを見たいと思ってきました」

(住民)「少しずつ前の形に戻していっていろんな人にこの文化を見てもらいたい」

祭りの主役を担うのは厄年を迎える男たち。

その中で数えで25歳となる15人が集う長聖会(ちょうせいかい)が火の攻防戦で社殿を守る大役を務めます。

取りまとめを託されたのは、村でコメ農家を営む河野(こうの)光治(みつはる)さん。

これまで祭りには、火を放つ攻撃側として参加してきました。


「僕だけじゃなくて野沢温泉の住人みんなが誇りに思っていると思うのでそういう機会に僕たち25歳としてメインじゃないが守らせていただくというのはすごい光栄でもうずっとやりたかったのですごく楽しみにしています」

全体の指揮をとるのは、村内でスキー場の仕事に携わる河野周平(こうのしゅうへい)さん。

42歳の男たちが作る「三夜講(さんやこう)」と呼ばれる組織が祭り全体を取り仕切ります。

本来なら3年間、様々な行事の責任者を務めますが河野さんたちの世代は、2021年の祭りが中止になったため、その任期は4年半に及んでいます。

「足掛け4年半長かったね、でも本当に楽しかった頼りになるみんなのおかげで道祖神委員長をつとめることができました本当にありがとうそして25歳長聖会、おれたちにはない若さで元気をくれました、今夜は一緒にお祭りを楽しもう元気よくよろしくおねがいいたします」

夜、男たちが集まってきたのは村内の旅館。代々、祭りに使われる火は、ここからもらい受けるのが習わしです。

大きなたいまつに灯した火を掲げ、会場へ向けて村の中を練り歩きます。


(河野周平さん)「いろんな思いがここまでのものをふりかえるとひとことでは言い表すことができない、我々にとっては生まれた時からずっと1月15日のお祭りはあってこれを執行する役をやるというのは、野沢温泉の男としてはすごく重大な役だと思っています」

会場に到着した火が社殿近くの焚き木に移されました。

住民はここから炎をとり、社殿へと向かうのです。

縄に手をかけて体を固定し、覚悟を決める若者たち。

そして…。


(河野光治さん)「同級生こんな小さい村なので少ないんですけどこの祭りのためにみんなかけているというかやっぱりかっこいいなと、去年の9月に自分のこどもが生まれまして今とってくれる映像とかを物心ついたときにみせてお前もこれやるんだぞって男の子なので絶対やれよっていうふうにはいいたいです」


1時間半にわたる攻防の末、燃え落ちた社殿。

先輩から後輩へ、そして、親から子へとつないでいく野沢温泉村の伝統。

様々な人の思いをのせて立ち上る炎が冬の夜空を焦がしました。