家族の愛情で治ると思い…
青木被告が大学時代に発症したとされる「妄想」。「ぼっち」「きもい」と聞こえることや、部屋に盗聴器や隠しカメラなどが仕掛けられているといった発言を受け、なぜ両親は病院に連れて行かなかったのだろうか。青木被告の父親は証人尋問で次のように述べた。
弁護人:大学3年の7月、政憲さんの様子は?
父親:3か月ぶりぐらいに会って、げっそり痩せていて顔面蒼白で覇気のない様子。妻と顔を見合わせてびっくりしました。
弁護人:なぜ病院に連れて行かなかった?
父親:息子は、自分は大丈夫だからと。統合失調症も家族といることによって、元気を取り戻せるだろうと。家族の愛情で治ると思い、病院に行きませんでした。

「どうして黙秘するのか?」
公判3日目の9月10日から始まった被告人質問。青木被告に「変化」が見られた。髪を短く切って、丸刈り姿で法廷に入ってきた。しかし、黙秘権を行使する姿勢は変わらなかった。
弁護人:「私の質問に全て答えられそうですか?」
青木被告:「全ての質問に黙秘します」
検察官:「どうして黙秘するのですか?なぜですか?」
青木被告:「…(沈黙)その理由についても黙秘します」
検察官が被告を諭すように質問を続ける。
検察官:「事件のご遺族、親族も傍聴されています。ご遺族はなぜ命を奪われなければいけなかったのか、わからないことがいっぱいあります、事件と向き合って、あなたが語らなければ、ご遺族は一生どうしてだろうと感じて生きていかなければいけない。大切な家族を奪われ疑問を感じ続けながら生きていかなければいけない。この法廷で何があったのか、話してくれませんか」
青木被告:「黙秘します」
こうしたやり取りが3日間にわたった被告人質問で、100回以上に及んだ。