徐々に病気に蝕まれる体。
しかし、夫婦は現実を受け止め、前を向いてきました。

妻・麻紀さん:
「病気はなってしまったら仕方ないので、考えてどうこうなることじゃないから、そういうことは考えなくて、楽しく、楽しくいければいいかなと思って。だからいっぱい楽しいことを考える。やりたいことやってですね」(涙拭う)
有坂栄康:(自動読み上げ音声)
麻紀さんの存在は?
「人生を彩るパートナーかな」
麻紀さん:
「松代焼行ってみよう、また」
「前買ったハート形のやつ、あげちゃったから、それ買う?」
有坂さん:(音声読み上げ)
「それいいね」
「コーヒーカップもほしい」
麻紀さん:
「いっぱいあるじゃん」
有坂さんは、自身の経験から「命の大切さ」をもう一度子どもたちに伝えられないかと考えていました。
思いを実現してくれたのは、最初に担任をした長野市の東条小学校の教え子たち。
有坂さんの思いを子どもたちに届けようとプロジェクトを立ち上げ、県内各地での授業を企画したのです。
再び、教壇に立つことになった有坂さん。
この日も授業に向け資料づくりに励みます。

目線を読み取る装置で選択し、一文字、一文字入力していきます。
命の授業でどんなメッセージを届けたいですか?
有坂栄康さん:(自動読み上げ音声)
「命を大切にする。自分を大切にする。自分を磨く。自分を好きになる。同じようにまわりを大切にする」
11月1日、有坂さんは長野市の篠ノ井西中学校へ向かいました。
この日、有坂さんの思いを伝えるのは、プロジェクトのメンバーで、教え子のクレイトン美保(みほ)さんです。
クレイトン美保さん:
「先生は今はこういう病気になって体が動かない状態だけど、熱い思いを持っている。それを伝えられる術になれるのであれば、ぜひやりたいなと思って」
全校およそ550人の前での授業。

有坂さんの資料を代読するクレイトン美保さん:
「(ALSになって)最も恐ろしいことはなんだと思いますか」
「それは、会話が出来なくなることです」
人工呼吸器を付ければ、声を失う、付けなければ、生きられない。
有坂さんは2つの選択を迫られました。