薪作りから窯の番までひとりで行い、休業日にも、すすの掃除や機械の手入れなど休むことなく働く弘幸さん。
近年は何度も体を壊すなど限界を感じ、廃業を決断しましたが、何より支えになってきたのがお客さんの喜ぶ顔です。
桑澤弘幸さん:
「脱衣所の空間から浴室の空間、全て『満足して来てよかった』『入れてよかった』と。満足できる温度にするのが僕の役目っていいますか、そのためにどんなことしてでも最後の日迎えるまで、営業をしっかりやっていきたいなと思ってます」
午後3時の営業開始と同時に大勢のファンが訪れます。

年配の男性:
「ここはえぇ本当に。近くでいいし、静かでいいし、湯もいいし、いいことばっかり」
常連さん:
「酒飲まなんでも風呂だけは入りたいよな」
営業日にはほぼ毎日入りに来るという常連さんです。
常連さん:
「小っちゃい頃はなぁ、子どもたちだけでお風呂来て、バシャバシャしてプールみたいに遊んでて、死んだおばあちゃんに、うんと怒られたりとかさ」
「95年経って、えらいこんだわ。無理もないと思うよ…」
この日が初めてという若いお客さんにも出会いました。
大学進学のためこの春、近くに越してきたという学生です。

大学1年生:
「散歩してるときに、すごいきれいな銭湯を見つけて入りたいなと思ってて、自分が人生で初めて来る銭湯なので、テレビとか写真とかで見る銭湯のイメージそのままだなと思って、たくさんの人が歩んだ歴史の中に自分も入っていると思って感動している」
訪れる人がそれぞれに桑の湯への思いを語ってくれました。
番台のスタッフが夕食の休憩時間になると、母の節代さんが代わりに座ります。
「ありがとうございました」

母 節代さん:
「ここへ来てたくさんお話しする人もいます。いろんな話を本当に挨拶だけの人もいますけどね。でも何となく心が通うっていう感じでいます。どうしようかなと思うくらい寂しいですね。皆さんに会えるっていうことがやっぱりね」