酔う原因は「自然振り子式」にあり?何それ??

なんでこの「381系やくも」に乗ると酔ってしまうのでしょうか?まずこの車両は、曲線が多い主要幹線を高速で走行すべく開発された「自然振り子式機構」というものを採用しているんだそうです。何それ?

スーパー文系の筆者では、どの文献を読んでもその仕組みがさっぱり理解できなかったので、弊社がいつも取材でお世話になっている、自動車を専門とする一般社団法人在籍の、「専門外の鉄道」にも滅法強い職員の方に、勤務時間外にお時間を頂いて、じっくりとレクチャーして頂きました。

【画像⑤】振り子式電車

まずは「振り子式電車」とは何なのか。。。それは「カーブを安定して速く走れるよう」開発された車両とのことです。

【画像⑥】振り子式じゃない列車

通常の列車だと、カーブを高速で走ると、車体自体が大きく傾いて、倒れてしまう可能性があります。

さらにはカーブの際に掛かる遠心力で、乗客がカーブの向きとは逆の方向に引っ張られるため、乗り心地が悪くなってしまいます。

【画像⑦】遠心力を打ち消す!

そのため、「振り子式電車」は
重心を低くする→車体が安定し、カーブでも倒れにくくなる!
車体に「振り子」を搭載し、カーブを通過する際に、カーブの方向に応じて車体を左右に傾ける
 →車内の乗客にかかる遠心力が打ち消される
 →通常車両よりもカーブを安定して高速に通過でき、乗り心地も確保できる!

機構を採用したということです。

「振り子式」も敵わなかった「伯備線のカーブ」!

ところが・・・!伯備線は、その「振り子」が追い付けないほどの凄まじいカーブだったというのです。

左カーブで左に車体が傾いたと思ったら、すぐさま右カーブが登場。右へ左へと激しいカーブが連続する区間では、車体が本来傾くべき方向とは逆に傾いてしまっているのです。

【画像⑧】きょうもよく傾いています

その時、乗客の体内では、内耳(三半規管や耳石器)からの情報と、目または体から入る情報が異なることになります。その結果、異なった情報を受けた脳が混乱して、酔いを引き起こすことになるのだそうです。。。

その状況を想像しながら書いているだけで、またお腹がゴロゴロしだして気持ち悪くなってきました。

「酔わない列車」、伯備線では実現できないのでしょうか?

期待の「フリーゲージトレイン」は...

【画像⑨】フリーゲージトレイン「GCT01」

そんな中、1999年以降の伯備線は「さらなるスピードアップ」を目指していたようです。

その1つとして導入が検討されたのが、一時期ブームにもなった【画像⑨】のような「フリーゲージトレイン」、すなわち新幹線の軌道を走った後、車輪の幅を変えて在来線の軌道を走るという列車です(車輪の幅は変わりませんが、山形・秋田新幹線がそれに近い形です)。当時の原稿には、試算で「さらに17分短縮する」と書かれていました。

しかしほかの弊社の原稿を検索する限り、2006年ごろまでは伯備線での導入がしきりに議論されていたようですが、今では岡山県議会の「JR伯備線新幹線化・フリーゲージトレイン導入促進 三県議会議員協議会」で取り上げられるくらいで、議論もすっかり収縮してしまっているようです。

ちなみに、このフリーゲージトレインが「乗り物酔い対策」をどこまで考えていたかは定かではありません。

【画像⑩】ふたを開けちゃったフリーゲージトレイン「GCT01」

そして「381系やくも」は今日も走る

結果、伯備線に新型車両が導入されることはなく、しかも「381系」が各路線で次々に引退していく中、41年経った今もなお、伯備線で「381系やくも」は改良を加えながら現役として走っているのです。

【画像⑪】こちらが元祖「国鉄色やくも」