山陰~山陽に立ちはだかる「381系特急やくも」という壁

山陰に向かう岡山県民、山陽に向かう鳥取・島根県民を大いに悩ませる「特急やくも」です。
なぜなら「やくも」に乗って、乗り物酔いする人が続出しているからです。ネット上では、2010年登場の改良型「ゆったりやくも」を引用して「ぐったりはくも」などとディスられてもいます。いったい、なぜそんなことになるの??
(前編)では、どのようにして両エリアを「伯備線」が結ぶことになったのか、1873年(明治6年)から紐解いてきたのですが、結果1980年代までしかたどり着けませんでした。
そしてここからは、ようやく本題です。時は流れて109年後の1982年、「揺れるやくも」電車特急381系が登場した年です。
「車内で酔う人続出」のニュース 映像を見ただけで酔ってきた...

掘り起こしたのは1982年10月のRSK岡山映像ライブラリーの映像。【画像②】は「381系やくも」デビュー3か月後の様子です。
最後尾の運転席から撮影したと思われる、当時の国鉄全面協力の取材。ひたすらカーブを、蛇のようにクネクネ車体を揺らしながら「やくも」が伯備線を力走する映像が「これでもか!」と出てきます。
その車内はというと。。。【画像③】のように、ぐったりとした乗客の姿が次から次へと映し出されます。

車内には部活動で移動していると思われる和歌山県の生徒たちの姿が映し出されていました。気の毒としか言いようのない状況で、今じゃ到底放送できなさそうな、本格的に「酔う映像」もありました(このあとさらに「くろしお」に乗ったかと思うと、居た堪れなくなります)。
当時の原稿は残されていなかったのですが、インタビューを文字に起こしてみると。。。
(車内販売員)
「揺れます、すごく揺れます。最初は酔いましたけど、今は慣れましたね」
(…な、慣れるんだ...)
さらに国鉄の職員が車内を巡回し、ぐったりしている人たちにも【画像④】のような紙を配っていました。
(国鉄職員)
「この列車を快適に利用していただくために、アンケート調査を出来ましたらご協力を。車両改善に活かせればと」

どうやら、当時の国鉄にとっても「揺れるやくも381系」は、一刻も早く解決せねばならない課題だったようです。