「眠っているあいだに、続きを夢の中で書いていることが多い」

ーこの本の最後に、川瀧喜正さんの「創作」についての文章がありましたが、創作の苦しみや喜びは、私もテレビやラジオの番組制作の際に同じように感じたことがありました。構成について、悩みに悩んだ末、ぽんと答えがみつかるような瞬間があったり、誰かの言葉やたまたま見かけた光景などにヒントがあったりすることもありました。一概にはいえないと思うのですが、創作の一例を教えていただけますか。

(小手鞠るいさん)
「創作の方法については、わりと地道です(笑)

(1)テーマは自分で探すよりも、誰かから与えられて書くのが好きです。

(2)どんなテーマで書いても、自分の書きたい文章を書ける、という喜びがありますので、わたしの場合、テーマではなくて『文章を書きたい』という欲求がまず先にあります。何かを書いていないと、生きている気がしません。笑

(3)リサーチが必要な場合、まず、本を集めることから始めます。しかも、買った本じゃないと嫌なので、本代はかなりかけています。笑ネットはまったく利用しません。

(4)資料の本を読みながら、書き進めていきます。

(5)ある時点で、まだ読んでいない本があっても、いっさい読まないで最後まで書き上げます。

(6)書き上げたあとで、残っている本は読んだり、読まなかったりします。

(7)(5)まで到達したら、朝いちばんに、その日書く場面が常に浮かんでくる・・・という感じになるので、あまり苦労はしないで書いていることが多いです。また(5)の段階では午前3時ごろ、眠っているあいだに、続きを夢の中で書いていることが多くて、起きたらすぐにそれらをばーっと書きます。

(8)創作ノート(あらすじ、下書き、資料からの書き抜きなど)は密度濃く書いてあるので(展示会にも展示されているはず)いつもノートをかたわらに置いて(お守りがわり)います。

(9)資料とはまったく別個に、好きな作家の本を寝る前に必ず1、2時間は読んでいます。
この読書が足りていないと、翌朝、すらすらと書けないことが多いです。

(10)最近では、書くスピードにこだわっています。同じクオリティの文章が、より短い時間で書けるようになりたい、と思っています。

英語で言うと、Move fast,and break things.(迅速にやれ、それまでのやり方を壊せ)みたいな感じでしょうか。あまり深く考えないで、とにかく好きな文章をより早く書こうとすると、うまく行くようです。
(でもこれは、最近の傾向です。昔はだらだら考えて書き直してばかりでした)