タイトルが決まると作品が命を得て、動き始める

(小手鞠るいさん)
「方法論は、作家によってまちまちだと思いますが、わたしの場合は、まるで大工さんが家を建てるかのように、文章職人と化して、毎日、コツコツと釘を打ち、家を建てていると言う感じで、答えが天から降ってくる、とか、そういう霊感的なことはあまりないですね」

「あ、ひとつ、重要なことを忘れていました。わたしの場合、タイトルが先に決まっていないと、プロットさえも考えられないので、とにかくまず、タイトルを決めてしまいます」

「『つい昨日のできごと』もそうでした。これは、(平凡社の)岸本洋和さんが、カーペンターズの『Only yesterday』から引っ張ってきてくださいました。

わたしのほうで、かなり古いカントリーソングの『Yesterday when I was young』というタイトルの日本語訳に相当するような、もっとシンプルで、おしゃれで素敵な言葉がないかな、と思ってご相談したのです」

「『つい昨日のできごと』というタイトルをまず決めてしまって、そのあとで、作品(この場合、同義語は物語と言って良いと思います)が命を得て、動き始めたという感じです」

「そういう意味では、何よりもタイトルが重要です。書き上げたあとで、タイトルを変えたりすると、その作品はたいてい失敗作となります(笑)子どもの名前を付け替えるようなものでしょうか?(わたしの場合は、です)」