◆買いだめには「覚悟」が必要

きのう、近所のスーパーで改めて値段を確認しましたが、ビールは350ミリリットル缶24本のケース売りで安くても4千数百円。一方、第三のビールは3000円を切っていましたから、そりゃあ物価高の今、うちもそうですが、家計の厳しいお宅は第三のビールですよ。

もちろん10月になればビールは下がりますから、それを待つという考え方もありますが、それでもおそらく1ケース4000円そこそこ。値上げ後の第三のビールと比べても、まだ1000円近くは高いはずです。

ということで私、先日2ケース買いました。第三のビールを(笑)。ただし、ここで気を付けなければならないのは、家にいっぱいあるからと、つい飲み過ぎてしまうこと――って、それ私なんですが(笑)。いつもは1本のところを2本飲んでたら、節約どころか高くついて、健康にもよろしくない。

防ぐには冷蔵庫に入れる本数を制限することで、今まで1日1本だったら1本しか冷やさない――買いだめにはそれくらいの覚悟が必要だ、と、これも私がカミさんに言われたことなんですが(笑)。いま駆け込み需要で、店によっては品薄になっているところもあるようなので、生活防衛には(あくまで飲み過ぎない決意の上で)、買い置きも有りかと思います。

◆3年後にはもう一つの庶民の味方「酎ハイ」も…

ちなみに今回の酒税改定では、冒頭お話ししましたが、ほかに日本酒が減税され、ワインが増税されます。上げ幅下げ幅共に1リットル当たりおよそ10円ですが、実際には資材の高騰などで日本酒はほとんど下がらず、ワインは若干上がるか据え置きのところが多いようだと、大手酒販会社の幹部は話していました。なので、ワインは慌てて買い置きする必要はなさそうです。

さて、2017年に決まった酒税改定。最後の3回目は3年後の2026年10月で、ここでまたビールは減税、発泡酒と第三のビールは増税されて、ついにビール類は3種類すべて同じ税額になります。メーカーがあれこれ知恵を絞って税金の安いビール飲料を開発してきた歴史も、多分これで終わり。しかも次回の改定では、この間ずっと据え置かれてきた庶民の味方「酎ハイ」類の税額も7円上がることが決まっています。

国税庁は改定の目的を「同じような酒の種類なのに税率に差があり、商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、税負担の公平性を回復する」ため、としていますが、消費者側からすれば、生活防衛のために、ビールから発泡酒、発泡酒から第三のビール、さらには酎ハイへと逃れてきた庶民を追い詰めるように映るのも事実です。

◆値上げを機に税金の使い道を考える

今月、私はこのコーナーで2回、税金の使い方がおかしくないですか、という話をしました。車を持っていない人にはほとんど恩恵のないガソリン代補助に数兆円も使う一方で、国立大学や学術機関では研究費や冷房代にも事欠く始末だったり、「予備費」という国会の承認なしで使える予算がチェックの甘さで悪用されていたりといった問題でした。

納税は国民の義務ですし、酒税の改定も6年前に私たちが選んだ国会議員が多数決で決めたことです。ただ、庶民に厳しい増税をするなら、その使い道は決して選挙対策などでなく、国民のため、この国の未来のために使って欲しいと、心から願います。

私たちも後で「何でこんなことに…」と後悔しないように、選挙で1票を投じなければいけないと心した、苦いビールの話でした。


◎潟永秀一郎(がたなが・しゅういちろう)


1961年生まれ。85年に毎日新聞入社。北九州や福岡など福岡県内での記者経験が長く、生活報道部(東京)、長崎支局長などを経てサンデー毎日編集長。取材は事件や災害から、暮らし、芸能など幅広く、テレビ出演多数。毎日新聞の公式キャラクター「なるほドリ」の命名者。