標準語統一の動きと、地域文化を守る取り組み

「どんどん上海語を喋ろうよ」という機運がある一方で、言葉は時代とともに変化します。今、上海でも学校では標準語で授業が行われています。若い世代になるほど、上海育ちでも標準語を使うため、「このままでは上海語はやがて消滅する」とも言われています。しかし、筆者の考えは違います。

「『世代が代わるにつれ、上海語も変わった』という考え方にとらわれる必要はない。また、過剰なまでに、『上海語はこう発音すべき』と固執する必要もない。バスの車内で上海語のアナウンスが聞こえてきたり、小さな食堂から『こんにちは』の上海語=『ノンホ』という声が聞こえてきたりする時…。そんな環境そのものが、上海語が家庭の中だけで使われる言語でなく、公共の場でも心温まる表現になることを、我々に示しているのだ」

現在、習近平政権は民族の一体感を高めるために、国民が話す言葉を標準語に統一しようと指導を強めています。独自の言語を持つ少数民族の中には、そうした強制に対して「自分たちのアイデンティティが奪われる」と危機感を強め、時に摩擦まで生まれています。

その一方で、上海では上海語を残そうと、地元の行政と大学が協力し、AI(人工知能)を活用して上海語を喋る人工的な音声を開発しているといいます。今回紹介した地元夕刊紙のコラムや、上海の大学などの取り組みを見ると、中央政府のやり方に表立って反発はしないものの、「方言という地域独自の文化を守っていこう」という考え方を葬り去ることはできないのだと感じさせられます。

さて、中国の話に限らず、私たち自身はどうでしょうか。福岡県や佐賀県など、それぞれのエリアに独自の方言があり、地域によって言葉は異なります。個人の意見ですが、ラジオは自由度の高い媒体と言われています。もっと地域の方言がラジオの番組の中で飛び交ってもいいのではないでしょうか。日本であれ中国であれ、標準語だけがその国を表しているわけではないのですから。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。