◆湿疹部位に過剰なペリオスチン
強烈なかゆみを引き起こす原因だったタンパク質“ペリオスチン”はどのようなものなのだろうか?

出原教授「どなたでも一定量は体の中で作られることが知られています。ただ、アトピー性皮膚炎の患者さんは、湿疹の部位で非常に多量の過剰のペリオスチンが作られます。一方『インテグリン』という物質が神経細胞の上に存在し、ペリオスチンが来るのを待ち構えています。そこにペリオスチンがやってくるとインテグリンと結合し、そのままダイレクトに神経に刺激が伝わります」

ペリオスチンが体の中で増えてしまうと神経細胞の一部であるインテグリンと結合して知覚神経を刺激、かゆみを引き起こしていた。出原教授たちの研究チームは、この仕組みを妨げる化合物も見つけた。
出原教授「CP4715という化合物が、ペリオスチンとインテグリンの結合を阻害できるかもしれないと考えて解析しておりました。その結果、期待通りペリオスチンの働きを止めてくれることを見いだしました」

つまり、人工化合物CP4715によって、かゆみを防ぐことが初めてわかったのだ。研究に一役買ったのが実験用のマウス。生まれながらにかゆみを訴え続けているいわば“アトピー体質”のマウスにこの物質を投与すると、たちまちかゆみを訴えなくなったという。
◆湿疹の改善効果も確認「新薬」に期待
出原教授「ペリオスチンの作用を止めることは、かゆみを止めて湿疹も改善する効果もあることも明らかにしております。いってみれば一石二鳥が期待できます」

医療現場で日々患者に接している医師も新たな治療薬の開発に期待を寄せる。

高松ひろこ皮フ科(福岡市西区)高松紘子医師「アトピーは通常の塗り薬や飲み薬の治療になかなか反応しない重症の方が一定数いらっしゃいます。そういう方に選択肢が増えるのはいいことですね」
厚生労働省によると、アトピー性皮膚炎の患者数は2020年時点で約125万人。多くの人を「かゆみ」から解放できるかもしれない新たな発見に、今後の研究開発が注目される。