◆横はタイ軍の訓練場「ここなら絶対に空爆されないセーフゾーン」

農園候補地に着いた。すぐ横はタイ軍の訓練場のようだった。正規の入国手続きなどを経ずにグレーな立場でタイに入国している彼らにとっては不安になる場所ではないだろうか、と心配になったが、アインは「ここなら絶対に空爆されないからセーフゾーンだな、ははは」などと冗談を言っている。確かに、ミャンマー軍とタイ軍との関係は特殊で、国際社会の手前、タイ軍はクーデターを擁護することこそしないが、裏ではさまざまな利権で繋がっているとされ、表立ってミャンマー国軍を批判することもない。要するにタイ軍としてはミャンマー情勢からは距離を置きたいというのが本音で、ミャンマー国軍にも「タイ側には迷惑をかけない」というのが暗黙の了解としてあるように見える。そうした事情を考えると、確かにここは問題の起きにくい場所だと言えるかもしれない。
◆ミャンマー側で繰り返される空爆

アインが「空爆」という言葉を使って冗談を言ったのには背景がある。国境地帯のミャンマー側では、現実に国軍が避難民が暮らすエリアを狙った空爆を繰り返しているのだ。少数民族武装勢力を含む反軍勢力は、実は地上戦では優勢だという分析もあり、「国軍のある部隊が〇〇から撤退した」といった情報が聞こえてくる。しかし、国軍が地上戦で劣勢になると、装備の面で優位に立つ空軍部隊を使って報復の空爆を激化させる、という流れがお決まりの構図となっていた。そういう意味では、国軍の劣勢を手放しで歓迎するわけにはいかない、とも思う。なぜなら国軍による空爆では、戦闘とは無関係の避難民の居住エリアが狙われるため、女性や子供、高齢者に多数の死者や負傷者が出てしまうのだ。現在の情勢はまさに反軍勢力が攻勢を強めていて、それだけ軍の空爆も激しくなり、連日のようにその被害が伝えられている。