法律の成立と両輪で加害者への治療の推進も
犯罪を未然に防ぐために、登録・確認する制度ですが、犯歴は最長20年前までさかのぼるとされています。拘禁刑で実刑を受けている場合は、執行が終了して20年、執行猶予の場合は裁判の確定日から10年、罰金刑の場合も刑の執行終了から10年というように段階があります。
では20年と1日が過ぎていたら、その人は野に放たれるのかという不安も当然湧きますし、20年とか10年という数字にどういう根拠があるんだろうという話にもなりますよね。
ですから法律を成立させたからといって、それで終わりではなく、国全体で性加害を繰り返す人の治療を推し進めていくということが必要になってきます。
性加害の要因は複雑です。もちろん加害者を擁護するようなことを言うつもりは一切ありませんが、性犯罪に限らず、何かの過ちを犯してしまう人は、幼少期にトラウマとなるような経験をしていたり、家庭の影響があって、それらが複合的な要因として絡み合ったりしていることが多いのです。これは社会全体で取り組まないといけないということになります。
完璧な法律が出来たわけではないという意識を持つべき
福岡県には性暴力根絶条例というものがあり、4年前から性暴力の加害者を対象とした相談窓口ができています。「痴漢や盗撮をやめたいけれどやめられない」という人たちに対応するもので、この4年間で340人から相談があったそうです。
そういった、加害者側のケアを同時に行っていかなければ、この日本版DBSの効力は十分に発揮されないんじゃないかと思います。また、対象となる範囲も学校や保育園・幼稚園などで義務化ということですが、そこから民間は漏れています。大手の塾や学童サービスは取り入れるでしょうが、個人で行っている家庭教師などは、どこまで浸透するでしょうか。
DBS導入の時間的・費用的なコストも関わってくると、教育産業は大手の独占になってしまうのではないかと心配する声もあります。もっとも、法律が成立したばかりですから、進めながらベストの形を社会全体として探っていくということが必要でしょう。
子供に対する性犯罪については、イギリス以外のヨーロッパ諸国、特にスウェーデンやフィンランドなどの北欧はで意識が高く、DBSの運用事例もそれらの国々から日本に伝わっているので、そういったものを参考にしながら、日本にベストのものをカスタマイズしていく、という意識が必要で、法律が出来たことによって抜け道もまた明確になる、ということにならないようにしなければいけませんね。