漫画市場は過去最高を更新中
世界三大プライベートエクイティファンドのブラックストーンが興味を持つぐらい「めちゃコミ」の価値が高いということなんですが、ここで国内漫画市場を見てみましょう。実は私、冒頭で名前を挙げた漫画配信サイトはほぼ全部登録しています。ちょっとしたスキマ時間に最初は「1日1話無料」でも、その続きが読みたいから、気づいたら課金してしまっています。
私のような人が多いから、漫画市場自体が今、過去最高を更新中なんです。約7000億円の規模があります。かつて「週刊少年ジャンプ」の全盛期がといわれていたのが1995年。それが紙で読む漫画のピークで、そこから規模縮小が続いて、2017年に底を打ちました。
その後、電子コミックが伸びていくんですが、そのきっかけは何だと思いますか? 答えは「漫画村の閉鎖」なんです。海賊版の無料で見られるサイトがあって、出版社がやっとの思いで閉鎖させたんですが、その漫画村のおかげで、人々がスマホで漫画を読むようになっていました。
漫画村が閉じた途端、有料サービスたちが跋扈するようになり、2018年からワーッと伸び始めて2020年、コロナで巣ごもり需要がきて、さらに特需。雑誌のコミック誌はこの20年で5分の1ぐらいまで縮小していて、コミック本は横ばい。でも、それを余りあるぐらい電子コミックが伸びていて市場は過去最高です。
私が所属する出版業界も近い状況で、電子コミック一人勝ちなんですよ。紙の書籍は横ばい、紙のコミックも横ばい、何が減っているかといえば、私の故郷である紙の雑誌はもう見るも無残。弊社(日経BP社)も「紙の雑誌は延命はしない、デジタルでやっていこう」って感じです。
韓国発のウェブトゥーンが潮流に
ブラックストーンはこれから世界に「めちゃコミ」を持っていこうとしているということを考えると、世界のコミック市場はどうなっているのか。漫画の世界では、日本がメジャーリーグです。日本が大体、世界の漫画市場の3分の1を占めています。
でも、北米のコミック市場は紙も含めて、この5年で売上高が4倍に伸びています。中国でもものすごく伸びていて、これから世界市場は伸びていくだろうというふうに言われてます。そこでどうやって日本のコンテンツ制作者を増やしていくかが課題です。
そんな中、気になるのは韓国勢。韓国のウェブ漫画をドラマ化するケースも多く、韓国のチマチョゴリを着ているのに日本人の名前に変えた少女漫画もいっぱあります。
漫画アプリは「LINEマンガ」と「ピッコマ」の2強ですが、「めちゃコミ」は実はアプリが弱く、ウェブに誘導しているんです。それは、アップル社などアプリストアに払うお金を抑えて売上高を伸ばすために、アプリよりもウェブに誘導してきたからです。でもそれが裏目に出てしまって、若い世代はアプリで漫画を読むので「LINEマンガ」と「ピッコマ」が席巻しています。
その「LINEマンガ」や「ピッコマ」で課金されているコンテンツはどういうものかというと、韓国で作っているオリジナルコンテンツが売り上げの9割ぐらい占めているようなんです。推定データではありますが、心当たりはありますよね。私も「あれも韓国だな、これも韓国だな」と思いながら見ています。全面カラー、さらにウェブトゥーンといって、縦にスクロールするように読むんですよ。
韓国発できて、日本の漫画家たちも「ウェブトゥーンやらなきゃ」って言って始めていますが、まだまだ韓国の勢いがすごいです。でも韓国勢にしてみると、韓国の漫画市場はあまり大きくないので、日本市場が主戦場。なので、日本を足がかりにして韓国勢はきっとこれから世界に出ていくでしょうね。