野党案の一本化は困難
では、野党側の対案はどうなっているのか、立憲民主、国民民主、日本維新の会、共産の4党について見ていきます。
まず連座制については、4党とも「導入」で一致しています。立憲と共産はさらに罰則の強化や法定刑の引き上げなどを盛り込み、国民民主は「議員が起訴された場合、政党交付金の交付を一部停止する」としています。
次に政策活動費ですが、立憲と共産は「廃止」。維新も現行制度は「廃止」し、使途や領収書の公開を前提とした「新制度を検討する」としています。国民民主も維新とほぼ同じ趣旨で「使途の公開を義務付ける」としています。
政治資金パーティについては、立憲が「全面禁止」。維新と共産は「企業・団体の購入禁止」で、以上3党はパーティ券に限らず、企業・団体献金については全面禁止を打ち出しています。一方、国民民主は「購入者の公開基準を5万円超に引き下げる」とし、政治資金の寄付と同様に、外国人の購入を禁止するとしています。
このように野党各党、一致するところもあればズレもありますし、これ以外に政党助成金の廃止やパーティ券収入の課税といった独自案もあって、一本化は困難です。ただ、先日の衆院補選の結果を受けて「対・自民」の構図は動きそうになく、実際、内容に隔たりもある立憲と国民民主が、改正案の共同提出に向けて一致する部分の条文化を進め、週明けの提出を目指しています。あらためて、選挙で民意を示すことの大切さを実感します。
政治はどこを向いていたのか?
最後に、そもそも今回のパーティ券裏金問題の根っこにあるもの、つまりは毎年億単位のカネが有力者に流れることで、政治はどこを向いていたのか、ということを考えます。
例えば、消費税です。1989年に消費税が創設されてからこれまで、国と地方を合わせた消費税の総額はおよそ476兆円にのぼります。「年金や医療、福祉の財源」とされますが、この間、法人税率は段階的に引き下げられて合計324兆円減っています。さらに経団連は去年、少子化対策の財源として「消費税引き上げは有力な選択肢の一つ」と、政府に提言しています。
法人(企業)に関して言うと、輸出品にかかる消費税率はゼロで、それどころか、原材料や部品の仕入れにかかった消費税分は輸出企業に還付され、元静岡大学教授の湖東京至氏によると、その額は2020年度、自動車や電機など上位10社だけで1兆2000億円を超えます。消費税率が上がると、還付金はさらに増えます。
法人税引き下げも、輸出企業への消費税還付も「企業の国際競争力を高めるため」などと言われています。
この間、サラリーマンの平均年収はバブル期の1992年をピークにじわじわと下がり、近年持ち直しつつあるものの、まだ92年のレベルに達しません。一方で、税と社会保障負担を合わせた国民負担率は、10%以上上がりました。預金金利は91年当時、普通預金でも3%を超えましたが、今はほぼゼロで、株価だけがバブル期を超えています。構造改革の名のもと、非正規雇用も大きく増えて、格差は拡大しました。
多くは言いませんが、これが現実です。政治は変わるのか――。政治資金規正法改正案の審議は、いよいよこれから本番です。
◎潟永秀一郎(がたなが・しゅういちろう)

1961年生まれ。85年に毎日新聞入社。北九州や福岡など福岡県内での記者経験が長く、生活報道部(東京)、長崎支局長などを経てサンデー毎日編集長。取材は事件や災害から、暮らし、芸能など幅広く、テレビ出演多数。毎日新聞の公式キャラクター「なるほドリ」の命名者。