東京の自宅でもお好み焼きを作ることがあるという有吉さん。鉄板に流した生地をさっと、おたまの底でまん丸にのばします。プロの越田さんもうなる腕前でした。この生地に千切りのキャベツをこんもりと乗せ、豚のバラ肉、イカ天を重ねていくスタイルが、広島のお好み焼きです。

関西とはまったく異なるスタイルのお好み焼きは、広島でどのようにして広まったのでしょうか。その起源は、戦前から全国各地で食べられていた「一銭洋食」にまでさかのぼります。具の種類は地域ごとに個性があるそうですが、構成はシンプル。広島では、鉄板へ薄く引いた小麦粉の生地に魚粉やとろろ昆布、天かすなどを乗せて半分に折りたたみ、ウスターソースを塗って提供されていました。

被爆地・広島では、焼け跡の屋台で一銭洋食が流行。たくさんの屋台がひしめき、味を競い合う中で、キャベツや豚肉、そばをはさみ込む形が編み出されます。ソースも、ウスターソースではなく、果実の甘みを生かしたとろみのあるものが開発され、いまのお好み焼きへと進化していきました。

広島のお好み焼きは、食べるときのスタイルも独特です。小ぶりな「ヘラ」で鉄板に乗ったアツアツのお好み焼きを小さく分けて直接、口へ運びます。これは屋台時代からの工夫で、洗い物を減らし、皿やはしにかけるコストを省く意図もあったといわれています。

「子どもの頃からこうしてヘラで食べていたから、口の中が鍛えられているのかな」

広島市内や、郊外に隣接する熊野町で数限りなくお好み焼きをほおばってきた有吉さん。広島っ子に染みついた習慣を忘れるはずもありません。そして、広島市出身のアンガールズ・山根さんに、上下町出身の田中さん、広島市に住んで10年目の枡田さんも、有吉さんの言葉に共感します。

「東京でもお好み焼きを食べたいってなるけど、やっぱり広島で食べたいんよね。広島で食べるお好み焼きは、なんでこんなにおいしいんだろうね」