詩のモチーフになったのは、佐々木禎子さんの千羽鶴。戦争で亡くなった人々を悼んで作った詩です。

サンクトペテルブルグ音楽院に留学していた1996年ころ、西本さんは、ラジオで流れるこの曲を聞いたそうです。

指揮者 西本智実さん
「(『鶴たち』は)広島の悲しみをもとに作られた作品の存在であって、また今、その作品を作った、それを歌い継いできている人たちが戦争をしているわけです」

「これは、あらためて今、広島からこそ、ここで歌って、そして多くの人たちに知っていただくと。そういうことが非常にふさわしいと考えました」

指揮者 西本智実さん
「あっちの壁にバン。ああ、いいですね」

「音は耳だけじゃなく、振動」

授業の1曲目「フィンランディア」で西本さんは、何かに立ち向かうような音や不穏な振動など、音についてアドバイスしていました。

一方、「鶴たち」では、こんな音色を指示します。

指揮者 西本智実さん
「楽に。トランペットは、張り切って聞こえるけど、夕陽のトランペット。お墓の前でトランペット。そういうイメージ。弾きすぎない。弾きすぎ」

「合唱のみなさんは、本当にとってもすばらしいです」

マエストロと学生たちが挑んだ音づくりは、2時間で整いました。

授業のラストは、きょうの成果を披露する発表会です。

♪鶴たち(日本語詞 西本智実)

「あの日 あなたは 鶴となり 飛びたった 雲の果てに
 時のかなたから この世へ 空からわたしに 語りかける」

― 西本智実さんによりますと、旧ソ連、ロシアの人々…、出会った人たちはほとんど歌えるということです。もとの歌詞はロシア語ですが、特別授業では西本智実さんが訳詞した日本語で歌われました。

― 「鶴たち」は、「第九ひろしま2022」(18日(日)広島サンプラザホール)の第1部で演奏されます。特別授業を受けた安田女子中学高校の生徒たちも合唱で参加するということです。