▼意見陳述(2)Nさん「もう一度話したい、もう一度名前を呼んでほしい」
(検察官代読・意見陳述より 内容を一部抜粋しています)

「(女性A)は思いやりのある本当に優しい人でした。誰かのためになるなら、自身の損得に関係なく手を差し伸べる人です。
周りの人からの信頼も厚く、家族や友人、仕事関係者、だれからも愛される素敵な人でした。
私たちは来年の春から一緒に暮らすため、新居の内見などをしていました。将来の話も楽しそうに話していました。
そんな彼女を一瞬にして奪われたのです。
事故の日、道路に散らばった事故車両の破片をタイヤが踏んで停車したときも、(女性Aさん)は事故当事者の心配をして「けがをしている人がいるから声をかけてあげた方が良い」と気にしていました。
あの日から約2年が過ぎようとしていますが、事故のことを忘れる日はありません。私たちに楽しい日常が一瞬にして深い真っ暗な地獄に変わってしまいました。
事故後、被告人からは謝罪の一言もなく、他の被害に遭われた方への対応を聞いても反省どころか、罪の意識はなく自身がどれだけのことを犯したのか理解していないと強く感じました。
愛するパートナーが、家族が、目の前で亡くなる辛さ・悲しさ・寂しさ・絶望感・憤り・憎しみが分かりますか。
事故の直後、心臓マッサージをしている私の胸の中で、彼女の口がかすかに動き、私の名前を呼んだような気がしました。
それが彼女との最後の会話です。
もう一度会いたい、もう一度触れたい、もう一度話したい、もう一度名前を呼んでほしい。
今まであった幸せは、日常はどの願いも叶うことはないのです。
どうか、被害者遺族の心に寄り添った判決をお願いします」