コメ騒動の時、何が起きていたのか? 農水省が10月まとめた資料にスーパーでの販売状況が掲載されています。
コメの販売量は4月以降、前年を上回る水準で推移。とりわけ8月は、3週間に渡り大幅に増えています。
農水省は騒動の前段として▽食料品全体の中でコメが割安だったことや、▽インバウンドによる外国人観光客の増加でコメの需要が増えていた、▽一方、猛暑・水不足の影響で製品にならないコメが多かった、▽こうしたことから6月時点の在庫量は過去最低だった、▽そして8月、南海トラフ地震の臨時情報の発表、品薄情報が広がったこともあって一気に買い込み需要が増え、供給が追いつかなかった、としています。
しかし今後は、価格の高騰から消費量は減少。この1年は、コメの生産量が需要を上回る見通しとしています。
農水省の担当者は今回の騒動は主に南海トラフの臨時情報によって起きた特異な現象で再度、こうしたことがない限り騒動は起きないとみています。
柴田和広 記者
「一方、コメの流通業界からは、この夏のコメ不足は、決して一過性のものではないという声も聞こえてきます」
地場の大手コメ卸、食協の 武信和也 社長です。
食協 武信和也 社長
「5年産が作況指数の割には収量が少なかった、ということになって、コメ騒動になりました。ことしの作柄も平年作という話がありますが、どの産地も思ったよりとれてない」
武信社長は、コメ騒動には国の発表以上にコメの生産量が少なかったことが関係しているとみています。ことしも全国のコメの作柄の良し悪しを示す作況は「平年並み」ですが、各地のJAや生産者の話から、去年より1割から2割少ないとみています。
影響は主に2つ。1つは、さらなる値上げです。
武信社長
「通常の価格の2倍の相場で今、コメが動いています。1割から2割上がるんじゃないかと思います。年明けですね。1割くらいは上がると思います」
もう一つはことし、新米の販売時期を例年より1~2か月前倒しした中、来年の夏、再度、コメ不足が起きるのではという危惧です。
武信社長
「平年作が保証できれば、通常通り売りますが、冷夏等何かの天候異変があれば、ことしと同じような現象、コメが足らない現象が8月・9月、可能性があると思います」
武信社長は国に対し、政府が管理する備蓄米の放出とコメの増産を要望するということです。
県内でも県やJAなどではコメの安定供給のために来年度、ことしの予想収穫量より3200トン余りの増産を求めています。
米価も上がった中、増産となるのでしょうか?
産地の一つ、三次市のJAです。
JAひろしま三次地域 高尾裕二 営農販売課長
「確かに米価が上がって、生産意欲は農業者の方、高まってきたような感じはするんですけど、やっぱり農業者の高齢化、法人とか大型農家さんも受ける面積が手一杯、これ以上増やせないと、極端には変わらないと思います」
さらにイノシシやシカによる食害が深刻化していることも、農家のやる気を削いでいるということです。
来年の作付けに向け、JAでは収量が多い多収穫米の栽培を呼びかけていますが、農家が応じるかどうかは分かりません。
府中町にあるスーパーのコメ売り場です。価格は安いものでも5キロ袋が税抜き3500円前後。去年より5割以上、上がっています。
買い物客
「コメは減ってますね、やっぱり高くなって、なかなか買わなくなってしまったんで、麺とか買ったりとか。仕方ない部分もあるんで、農家さんこともあるんで」
買い物客
「ふつうに今まで通り買ってます。おコメの方が体にいいから、パンよりも」
ところが…
買い物客
「これよりちょっと安く買えた気がするんですけど、1か月前くらい(ちょっと上がったんですか?)上がったと思います」
来年、コメ騒動が起きるかどうかは分かりませんが、価格高騰は続きそうです。消費者が納得してコメを買うためにも、産地や流通の段階で何が起きているか、分かりやすい情報発信が求められています。