当時、新婚だった阿部さん。夫は、その年の暮れに出征から無事に帰ってきました。

ただ、親戚からは離婚を迫られました。

阿部静子さん
「姑さんから、『1人息子の嫁があなたのようなみにくいものを、許すわけにはいかん』と離婚を迫られましたが、夫ががんとして許しませんでした。
惨めな姿で、これでいいんかいね…と思いながら、気を遣いながら過ごして参りました。何度も、死にたい、と、思いました」

連れ添うことを決めてくれた夫との間に、3人の子どもにも恵まれた阿部さん。

しかし、79年が経った今も、心に負った傷は消えないままです。

阿部静子さん
「ありがたいと思うやら、あのとき離婚してくださったらどんなに楽だったか…罰当たりなことを考えたり、いろいろ悩んで参りました」

あの日、強烈な熱線を浴びた多くの人が、こうした心の傷を抱えたまま生きてきたのです。

「こうした苦しみがあることを、自分がいなくなった後も覚えていてほしいー」

97歳となった阿部さんは、体調が許す限り、語り続けるつもりです。