“下町のお嬢さん” オキちゃんとの出会い
赴任後、長﨑さんがまず取り組んだのは餌の鮮度管理、血液検査による健康管理、そして途絶えていた訓練種目の復活でした。その立て直しに大きな力を貸してくれたのが、オキちゃんでした。かつての映像を見返す長﨑さんに笑みがこぼれます。
「目がほら、かわいいんですよ。ちょっとふっくらしているじゃない、下町のお嬢さんというか、親しみがある顔なんですね」
“貴婦人というより、下町の娘” ―― 長﨑さんはオキちゃんのことをそう表現します。初めて会った瞬間から、人懐っこく、目が優しく、訓練を始めても逃げることがありませんでした。他のイルカが嫌がって姿を消してしまうことがある中で、オキちゃんは生真面目に、訓練に向き合い続けました。
「オキちゃんじゃなかったら、できなかった」
ショーの立て直しが軌道に乗りはじめた頃、長﨑さんは大きな挑戦を決意します。1978年11月、アメリカでシーワールドなどの水族館を視察した際に目にした、イルカの「前方サマーソルト(宙返り)」でした。
当時、後方に回転する宙返りは国内の他水族館でも行われていましたが、前方に回る宙返りはどこでも成功していませんでした。
帰国後、「アメリカまで行ったのだから、具体的な成果を」と、長﨑さんが迷わず選んだパートナーが、オキちゃんでした。
「オキちゃんじゃなかったら、できなかったかも。だって、オキちゃんはサボらないでしょう。真面目でしょう」











